secure_asset JTF 日本翻訳連盟 一般社団法人 日本翻訳連盟について 会長挨拶

会長挨拶

会長挨拶

二宮 俊一郎 JTF会長、株式会社翻訳センター 代表取締役社長

二宮 俊一郎
株式会社翻訳センター 代表取締役社長

 1981年に設立された日本翻訳連盟は40年間以上、日本の翻訳・通訳業界に伴走し続けてきました。この歴史が長く継続されるよう、積極的に活動に取り組んでまいります。

 日本翻訳連盟の特徴のひとつは構成メンバーにあります。翻訳者・通訳者である個人の方、翻訳・通訳エージェントの方、ソースクライアントである法人の方、そして翻訳支援ツールや機械翻訳を提供する法人の方といった、翻訳・通訳に関わる多様な立場の方々に御参画頂いております。どの参画メンバーの方々も翻訳・通訳業界の発展には不可欠な方々であり、それぞれの立場で協力し合わなければお互いの仕事が成り立たない関係にあります。しかしながら、それぞれの立場が多様であるが故に、相互の意見や利害が異なることは当然にあります。だからこそ、立場の異なる者が意見交換できる場所である日本翻訳連盟は、翻訳・通訳業界において稀有な団体として価値を提供し続けてきました。

 一方、現在、翻訳業界は大きな変革期にあります。変革の一因は翻訳技術の進歩、とりわけ機械翻訳の性能向上にあります。機械翻訳等のいわゆるAIがメディアで話題になるとき、「AI vs. 人間」という二項対立図式で語られることが多いです。「MTが進化すれば人間の翻訳者は不要になる」と言われることも多いです。しかし、本当にそうでしょうか。私はこれらの見解には全く賛同しません。MTがどれほど進歩しても、翻訳者の役割は残り続けると考えています。MTは人間が使う「道具」だと考えています。翻訳に携わる者に求められているのは、MTを「人間の敵」として拒絶することではなく、「道具」として使いこなすことだと考えています。そして、より多くの言葉を、より適切に翻訳して、異言語間のコミュニケーションを促進していくことが我々の役割だと考えています。

 道具がいくら変化しようとも、翻訳や通訳が提供する価値は何ら変わりません。母語が異なるために意思疎通がままならない人々がいるとき、その耳元で双方の母語をそっと語りかける。このコミュニケーション支援の価値は、昔から、今も、将来でも、何も変わることはないでしょう。企業活動においてはグローバル化が深化し、世界中を販売先とするだけでなく、諸外国を生産地とするほどになっています。ネットワークが世界を連結し、コンテンツは即座にどこからでもアクセス可能になりました。日本中の街角で日本語とは異なる音韻を耳にするのは日常となりました。これほど結びつきを深めた世界で、翻訳・通訳の必要性が低下するとは思えません。

 円滑な外国語コミュニケーションを促進するという翻訳・通訳業界の役割は益々大きくなっていくでしょう。日本翻訳連盟もその責務を果たすべく、業界の発展に尽力して参ります。