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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

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2009年のJTF翻訳セミナー活動報告

第8回
開催日 2010年1月14日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:15 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「医薬翻訳:クライアント満足度を高めるために翻訳会社・翻訳者がすべきこと」
講演者 ●村田 桂子(むらた・けいこ)氏
株式会社MCL 代表取締役
●平井 由里子(ひらい・ゆりこ)氏
同社 取締役
概要 リーマンショック以降、ほとんどの翻訳分野で受注が減少している中にあって、同社の医薬翻訳部門は常に満員御礼の状態である。なぜ医薬翻訳業界が不況に強いのか。2010年度問題など、現在の製薬業界を取り巻く状況を分析し、翻訳ビジネスにどう結びつけていくべきかについて語る。
医療翻訳と一口に言っても、製薬会社、医療系出版社、医療機器メーカー、大学病院など、クライアントは様々である。それぞれのクライアントに満足してもらえる翻訳は、どういったものなのか。クライアント満足度を高めるために、翻訳会社、そして翻訳者たちは何ができるのか。医療翻訳に役立つサイトや有用な情報、品質向上のためのIT技術なども交えながら、クライアントのニーズに的確に応え、安定的に仕事を獲得していくためのポイントを紹介する。

【対象】
○医薬翻訳者を目指す方
○医薬翻訳者の方(フリーランス・社内)
○医薬分野に進出を考えている翻訳会社の方

⇒本研究会の講義内容をDVDで受講できます

【講師略歴】
●村田桂子氏((株)MCL 代表取締役)
薬学部を卒業後、1986年MS法人(有)MCLを設立し、代表取締役となる。事業と子育ての傍ら、医療通訳を目指し努力するも、挫折。医薬翻訳を始める。
2002年京都大学医学部附属病院探索医療センター検証部の研究生となり、米国国立癌研究所(NCI)のがん情報サイト翻訳プロジェクトでチームリーダーを務める。
2003年MCL内に翻訳部門を設立。以後、登録翻訳者とともにアトラスなどの医学書、治験文書、論文など、多数の翻訳を手がける。今ではすっかり医薬翻訳の魅力にはまる。

●平井由里子氏(同社 取締役)
大学卒業後、大手銀行に入社、システム開発部に配属となり、銀行オンラインシステム基幹ソフトウェアのカスタマイズ・保守に携わる。
1998年に同社退職後、会議通訳者を目指し、夫をひとり残して、英国留学を断行。
通訳者としてデビュー寸前、村田と出会い半強制的にMCLに入社。翻訳主任を務める傍ら、銀行時代のシステム開発経験を元に、翻訳支援ソフト「対訳君」、アラインメント&翻訳品質チェックツール「CheckAlign」の開発で陣頭指揮をとる。

2009年度 第8回JTF翻訳セミナー報告

 不況に強いと言われる医薬翻訳業界であるが、この業界では何が起きているのか。現在の状況と今後の展望について、MCL 社長の村田氏と、同社のソフトウェア開発部門で指揮を取る平井氏が語った。

不況に強い医療翻訳
 日本では65歳以上の高齢者人口の占める割合が年々上昇し、それに伴い医療を求める人の数は増える傾向にあり、医療が果たす役割も大きくなるだろう。医療は世界的に発展しており、最新情報はほとんど英語で発表されることから、今後、医療翻訳のニーズもますます高まる。
 一口に医薬翻訳と言っても、製薬会社の新薬申請の文書から、医師が投稿する論文、医学書、公的機関のHP の医療情報、医療機器メーカーのマニュアルまで多岐にわたる。クライアントの満足を得るためには、しっかりと相手の状況を理解しニーズに応えていかなければならない。

製薬会社の新薬開発に関わる翻訳
 新薬開発には莫大な予算と膨大な年月が必要である。基礎研究に3〜5年、動物による非臨床試験に2〜3年、人に対する臨床試験に5〜7年を要する。そしてそれらの結果がよければいよいよ申請となるが、申請にも2年程度の期間がかかる。
 一方で、新薬の特許期間は20年(5年の延長申請可)であるが、特許は新薬開発の最初の段階で申請するため、実際に市場で販売されてからは約10〜15年で特許が切れる。
 「2010年問題」と呼ばれているが、大手製薬会社の主力医薬品がここ数年の間に次々と特許期間満了を迎える。特許が切れた後はジェネリック医薬品など安価な薬に市場を奪われてしまう可能性があるため、製薬会社では一日でも早く新薬を発売したいと考えている。
 このような状況から、新薬申請に関わる翻訳はフォーマット、正確さ、そしてスピードが非常に重要となるが、翻訳料金を不当に下げられるということはまずない。製薬会社の要求レベルは高いが、それに応え信頼を勝ち得ることができたら、翻訳会社はそれなりの利益が見込める。

論文翻訳
 医師不足と騒がれているが、日本の医師、特に大学病院の医師たちは本当に忙しく、論文を書く暇がない。そのため不十分な原文のまま、翻訳会社に英訳を依頼してくるケースもあるが、内容について確認しようにも電話で連絡が取れないことも多い。しかし、先生方の論文にかける想いは熱く、非常に高品質な翻訳が求められると同時に専門性も高い。このような状態で高品質な翻訳を仕上げるのは多大な労力がかかり、費用対効果は低い。しかしながら、医療翻訳を行ううえで、世界に日本の医療を紹介し、また海外の最新医療を日本の医療現場に伝えることができるという充実感と達成感は大きい。

クライアントのニーズに応えるために何ができるか
 翻訳会社は、クライアントの要望をしっかりと翻訳者に伝えることが大事であり、参考情報や過去の対訳を提供するなど可能な限り翻訳者をバックアップすべきである。さらに薬の用量・用法などは決して間違いが許されない。そのため、同社は数字や単位記号、指定用語が正しく使われているかを機械的にチェックできるアプリケーションソフトCheckAlign を開発し、翻訳が医療事故につながらないように最新の注意を払っている。

医薬翻訳者に求められる資質
 高い専門性と語学力が求められると同時に文章の論理的展開ができることが重要である。単に翻訳を「言葉の置き換え」と捉えていたのでは、クライアントの真の満足は得られない。日頃から強い好奇心を持って物事に接することと、疑問があったらとことん調べる粘着性が翻訳者としての利点となる。そして何よりも、専門性という高いハードルを乗り越えるためには、人々の健康と幸せに貢献できることに誇りと喜びを感じられるかどうかが重要である。

 最後に、「不況だからこそ、翻訳会社同士がお互いに協力し合い、翻訳のパイを広げる努力をしていきたい。目指したいのは目先の利益ではなく、翻訳業界全体の健康と幸せである」と村田氏は講演を締めくくった。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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