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JTF翻訳セミナー(東京)西日本セミナー(大阪)
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2008年の西日本セミナー活動報告

第n回
開催日 yyyy年mm月dd日(木) 研究会:14:00〜16:40 懇親会:17:30〜19:30[希望者のみ]
テーマ 「半歩抜きんでた医薬翻訳者になるために:リピートオーダーをめざして」(通算133回)
講演者 石原 文子(いしはら・ふみこ)氏 医薬翻訳者

講師紹介【講師略歴】
大阪大学工学部原子力工学科卒業、同大学院博士課程終了・学位取得。複数弁理士事務所勤務を経て、アルカディア知財事務所を開設(2006年)。
専門分野:電気・電子・通信・機械。
所属:日本弁理士会、AIPPI、日本弁理士会国際活動センター、日本弁理士会近畿支部国際情報委員会、日本弁理士会近畿支部ベンチャーサポート委員会、西日本弁理士クラブ、関西特許研究会、日本弁理士会知的財産価値評価人候補登録、日本弁理士会大阪特許相談室相談員。

2008年度第1回西日本セミナー報告

 PCT 出願の明細書は、どの程度原文に忠実に翻訳するべきか? アメリカ合衆国では、なぜmeans for doing の使用に注意が必要なのか? ―などなど、これらの疑問は、翻訳経験の浅い方はもちろんのこと、それなりに特許明細書翻訳の経験を積んで来られた方々でも迷いの生じるところではないでしょうか?
  これらの疑問にさくっと答えを提示して頂いたのが、アルカディア知財事務所弁理士 福本将彦先生を講師にお招きして行われたセミナー「外国出願を見据えた明細書の書き方と翻訳上の留意点」でした。
  技術立国として生き残りのかかる昨今、産業財産権への関心の高さを反映してか、ご参加頂いた方々も、弁理士の先生や特許事務所所員の方、翻訳者としてすでにご活躍の方のみならず、翻訳者志望の方や特許翻訳に関心がおありの方などさまざまで、セミナールームの席は全て埋まる盛況ぶりでした。

  さて、講師の福本先生は、技術者として特許明細書を作成されてきただけでなく、ご自身が明細書翻訳者でもあり、両方において豊富な経験をお持ちです。明細書作成・翻訳文作成のいずれか一方の専門家とは異なる視点で明細書翻訳について語られたことが、このセミナーの最も顕著な特色だったと思います。
  とりわけ、最近の各国の法改正、審査の傾向、判例などの裏づけに基づき、現地代理人の意見も組み入れつつ説明がなされたことについて、参加者の皆様には好評でした。たとえば、最新版の米国審査便覧では択一表現or の使用が認められたにもかかわらず、依然or の使用が避けられる傾向にあること、A or B の代替表現として定着しているat least one of A and B について、従来の解釈とは異なる判決が出されたことなど、特許事務所外部の方々には、耳よりの情報だったのではないでしょうか。
  また、駆け出し翻訳者である筆者の素人意見で恐縮ですが、特に目が開かれる思いがしたのは次の2点です。means for doing という表現をクレームに使用した場合と使用しなかった場合に、裁判の場において具体的にどのような利益・不利益が生ずることになるのか。そして、実施形態の説明とクレームとは、そもそもどのような目的で書かれているのか。後者については、その顕著な相違点を、構成要素の単複の使い分けを例にとって対比説明されたので、翻訳作業に即生かせるものでした。

  明細書翻訳のルールはひととおり知っていても、その根拠が分からなければ、なんとなく心もとないものです。受け取った情報をどう翻訳に生かすかは、個人の考えに基づくところだと思いますが、「なぜこのように訳すのか?」という問いに対して明確な答えを用意できるのは、出願後の中間処理においても有用なことと思われます。
  各国の審査基準がそれぞれ異なるために、たとえばクレームの翻訳について、書き流しクレームの構成要素列挙型へのリライトにはじまり、多数項従属クレームの単一項従属形式への書き換え、さらには出願国に応じたソフトウェア発明における発明対象の表現変更など、どこまでが翻訳者の仕事か、どこからが特許実務者の仕事か、明確な境界線を引くのは難しいと思われます。現実問題として、これらの要望に翻訳者が対処するとなると、相当高いハードルでしょう。しかし、「外国出願用の明細書を整える」とは、単に日本語から英語にするだけでなく、かかる実務的な作業が伴うと知っていることは、特許実務者と翻訳者の効果的な連携プレーという観点から、ひいては翻訳者が客先の要望に柔軟に対処していくうえでも、大きな助けとなるのは間違いありません。
  また、翻訳者の立場から明細書を作成される方々への要望として、福本先生が「外国出願を予定しているのであれば、翻訳されることを前提として、明快で論理的な日本語明細書を書く」ことを、終始推奨されていたのがとても印象的でした。

  質疑応答の時間には、PCT 出願の翻訳文について、「内容を的確に表現するために、厳格めの意訳か緩やかめの逐語訳くらいが良いのではないか」という福本先生のご意見に対し、特許事務所よりご参加の方から賛同される声も聞かれました。PCT 出願の翻訳文が原文のミラートランスレーションであるべきかどうかは盛んに議論が行われていますが、審査官は人間であり、審査はコミュニケーションであるという視点は、ゆるがせにしてはならないと思います。

  日本から外国の特許庁に提出された英文明細書には、何かと問題が多いと言われています。それにもかかわらず、特許実務者と翻訳者とは、スムーズに意思疎通が図れていないのが現状だと思います。参加者の皆様のお声から、このたびのセミナーは、いずれの立場からも触発されることが多かったようです。日本語と英語という全く体系の異なる言語を使用している以上、翻訳上の問題を完全に回避するのは難しいと思われますが、英文明細書の品質向上を目指して、モチベーションの高い方々と共に学ぶ機会は、このうえなく有意義なものでした。このような貴重な時間を過ごさせて頂きましたことにつき、ご指導頂きました福本先生、ご参加頂きました皆様に、心より御礼申し上げます。

報告者: 安江 佳奈 (株式会社翻訳センター 大阪営業部 校正担当)

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