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翻訳者・翻訳会社・翻訳発注企業のためのJTF翻訳祭【主催:翻訳業界団体の日本翻訳連盟】
「グローバリゼーションと翻訳業界」〜世界市場へ、正確に、素早く、情報発信をするために〜
| ⇒翻訳祭のセッション内容はDVDで受講できます |
第17回JTF翻訳祭が10月17日「グローバリゼーションと翻訳業界〜世界市場へ、正確に、素早く、情報発信をするために〜」をテーマに、東京・八丁堀のマツダホールで開催された。メイン会場では、まず最初に、トヨタテクニカルディベロップメント(株)の理事・情報解析部長を務めておられる竹中弘氏による講演が行われ、次いで、山本ゆうじ氏の司会により、「ツール活用で品質と効率の向上を両立する」〜MT/TMワークフローの現状と未来〜というテーマのもと、JTF翻訳支援ツール委員長・久徳省三氏をはじめ、主としてIT分野で翻訳支援ツールを活用されているベテランの方々によるパネルディスカッションが行われた。このようなツールは、翻訳業界においては、ソフトウェアのマニュアル翻訳など、一部の分野でしか利用されていないのが現状であるが、IT関連分野以外からも多数の翻訳者が講演会に参加されており、今後の支援ツール類に対する期待の大きさを物語る結果となった。最後に、外資系経営コンサルティング会社で通訳・翻訳者として活躍されている岩田ヘレン氏による講演が行われ、日英翻訳の様々な問題点や工夫などについて、興味深い解説を聞くことができた。
地下1階のサブ会場では翻訳プラザが開催された。翻訳プラザは、各種の企業が翻訳支援ツールやCD版辞書などを出展した展示・デモコーナー、およびJTF法人会員の翻訳会社を中心とする書籍・翻訳相談コーナーなどで構成され、9階のメイン会場とは離れた位置での開催であったにもかかわらず、非常に多数の参加者の注目を集めていた。
講演終了後には交流パーティーが開催された。経済産業省の商務情報政策局サービス産業課から、課長補佐・竹本林官様、大西航様のご出席をいただいた。また、翻訳祭に招待されたJTF<ほんやく検定>の1級合格者6名に記念品が授与された。これら6名の翻訳者には、パーティーに参加していた翻訳会社などのコーディネーターや営業担当者から熱心な接触があったようである。JTF翻訳祭は、ここ数年、若い翻訳者や女性の参加者が増えており、交流パーティーも毎回にぎやかなものになっている。翻訳祭の成功は、JTF会員の増加につながるだけではなく、業界の活性化に寄与するものと期待される。
今回、これら講演やパネルディスカッションの様子は、DVD化してJTFから頒布される予定である。このような映像資料の提供が、首都圏以外の地方に在住する会員にとって役立つことになれば、JTF翻訳祭開催の意義もさらに高まるものと期待される。


【講演1】「自動車製品の翻訳」〜トヨタが求める品質と翻訳者の育成〜
竹中 弘氏(トヨタテクニカルディベロップメント株式会社 情報解析部理事/部長 弁理士)
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社(TTDC)は、トヨタ自動車の車両開発や開発支援を行う、トヨタの100%出資子会社である。社員の90%は技術者だが、知財部門の中に翻訳専門部隊があり24名の翻訳者を含む42名が所属している。業務の約90%がトヨタ関連のものであり、営業をしなくても仕事が入る状況であったが、私が翻訳業務担当の部長に就任した2005年には、2年連続で20%以上の赤字となるなど業務は悪化していた。そこで私は、品質管理、営業機能導入、顧客ニーズにあった品質・納期・価格設定という3大改革を行った。
例えば、品質管理改革では、お客様担当制度を作り、翻訳者が営業と一緒に顧客を周り、受注から納品までを担当する。翻訳者が直接顧客と接することで、顧客の生の声を把握し、コストに関する意識改革が生まれた。価格設定では、品質と納期により価格を松竹梅と変化させ、顧客が選択できるようにした。改革の結果、売り上げは1.5倍に増加し、顧客の信頼獲得につながった。ただ、翻訳者が営業に出るため翻訳時間の確保が難しいなどの課題も残った。
今後の翻訳業界の見通しとしては、語学スキルが日本人全体で上がる傾向にあることや、翻訳支援ツールの普及などによって、専門分野の技術者が自分で翻訳できる分野が増加し、翻訳の市場規模が縮小する可能性があるのではないかと考えられる。翻訳業界で生き残るには、大量・短納期案件や、専門性が極めて高い案件を受注できるようスキルを上げることが必要ではないかと感じている。


【講演2】「グローバル時代の日英翻訳」
岩田ヘレン氏(外資系大手経営コンサルティング会社 翻訳通訳者)
本来、翻訳は翻訳先の言語のネイティブが行うものであるが、日本では、日英翻訳の多くを日本人が行っているのが特徴となっている。翻訳会社に日英翻訳市場の現状を調査したところ、ある会社では年10% 成長しているという回答が来た。日本語のわかる英語ネイティブが少ないため、今後も日英翻訳の需要が増えることになれば、英語ネイティブ翻訳者の絶対数が足りなくなり、日本人の活躍の場が広がるだろう。日本語は、ヨーロッパ言語から見ると非常に難解で、勉強している人も少ない。現在は日本語よりも中国語の人気が高くなる傾向もある。
顧客のニーズとしては、品質、翻訳スピード、姿勢の三つが重要である。この中で翻訳スピードは、4,000〜5,000字/日が求められている。また姿勢とは、顧客の要求に対して前向きに取り組もうとする意欲のことである。品質に関しては、日本人の英語はとても読みやすいと言えるが、英語と日本語での表現方法の違いで、日本人が犯しやすいミスがある(会場では、これについて具体例をたくさん挙げて説明)。
【質疑応答】
(質問)日英翻訳がインドなどのもっと安い市場で行われる可能性は無いだろうか。
(回答)背景知識があり、品質の高い翻訳者がいれば、インドに行く可能性はあるが、実際には難しいと思う。
(質問)日本人のクライアントから、自然な英文よりも日本人にわかりやすい逐語訳をするよう頼まれた場合はどうするか。
(回答)クライアントの意向は絶対なものとして、それに従ったほうが良いでしょう。


【パネルディスカッション】「ツール活用で品質と効率の向上を両立する」
〜MT/TMワークフローの現状と未来〜
<コーディネーター>
山本 ゆうじ氏(秋桜舎代表、言語・翻訳コンサルティング)
<パネリスト>(五十音順)
・岡野 徹氏(SDL トラドス ジャパン LSP Business Manager)
・川原 勝氏(株式会社十印 サポートセンター兼エンジニアリング部 シニア マネージャ)
・久徳 省三氏(実務翻訳者、JTF翻訳支援ツール委員長)
・塩津 誠氏(富士通株式会社 ソフトウェア事業本部 ミドルウェアコンポーネント事業部 プロジェクト部長)
・永島 和暢氏(ライオンブリッジ ジャパン株式会社 ソリューションズ アーキテクト)
・柳 英夫氏(株式会社サン・フレア GMS ソリューション事業部 チーフコンサルタント)
・脇田 早紀子氏(日本アイ・ビー・エム株式会社 ナショナル・ランゲージ・サポート)
●論点1:翻訳メモリと翻訳ソフトはどこまで活用されつつあるのか?
山本:翻訳メモリ(以下TM)は、翻訳会社では使われていますが、翻訳ソフト(以下MT)はどうですか?
塩津:MTの売り上げは30億円程度あるが、一方で、無料のインターネット翻訳サイトは、一日50万件のアクセスがある。MTの今後の普及に期待している。
脇田:社内の翻訳でTMは活用しているが、MTは実験以外では使っていない。何度か使ってみたが、うまくいかず挫折している。スピードが遅く、誤訳が多くて、使いづらい。
山本:MTが普及していないのは現実だが、実際はどうですか?
永島:ソースクライアントを巻き込んでMTを使用したことがある。TMに無い翻訳文をMTで代用した。
川原:MTは人間と同等に翻訳できるようになってほしいという理想があるが、翻訳文書によってはMTの翻訳そのままでもよい場合もあり、これを公開して利用者が改良していく、という方法もあるのではないか。
●論点2:今なぜ翻訳ソフトなのか?
山本:MTは使い方が理解されてこなかったという問題点がある。MTに期待する点、利点、などはどうですか?
久徳:発注者側にはMTでコストダウンが図れると考えている傾向がある。これは間違いである。翻訳者側にメリットがない。
脇田:MTもTM同様、コストダウンでき、品質向上に役立つようになると考える。MTを活用すれば、翻訳者の付加価値が上がる。例えば、訳漏れがまったくないなど。翻訳会社のチェッカーが必要なくなり、コストダウンが図れるとも考えられる。
柳:MTは生産性を上げるために使う。でも新しいツールの出始めは、使いこなせる人が少ないため、生産性が一時的に下がるのはしょうがない。グーグルフレンドリーな文章、用語をいかに使っていくかが今後の鍵になる。
●論点3:翻訳ソフトで解決できる翻訳業界の課題
塩津:MTをカスタマイズするMTグーグルデベロッパーが重要になってくる。単語、フレーズの登録がきちんとできればMTが十分活用できる。
岡野:MTでグーグルを作れるようになるには何が必要なのか?
塩津:基本は、原文と訳文をコツコツ入力することで、日本語と英語を両方文法的に理解できる技術者が必要である。
川原:翻訳業界の解決すべき課題に、MTの使い方があるのではないか。
左から: 脇田早紀子氏、 岡野徹氏、 山本ゆうじ氏
前列左から:
永島和暢氏、塩津誠氏、
久徳省三氏
後列左から:
川原勝氏、柳英夫氏


会場風景
【交流パーティー】
●東 郁男(JTF会長)氏挨拶
翻訳業界内では、まだまだ動向が推移していると思います。クライアント側における潜在的なニーズをJTF自身が掘り起こしていけば、さらに発展していけると考えます。10月1日に郵政が民営化され、それに伴って金融、輸送、保険などの分野に影響がもたらされるでしょう。世の中どんどん変わりますので、我々の業界も改革なくして成長なしと考え、前向きに突き進んでいきたいと思います。本日は一般の方々も参加いただいていると思いますが、この機会に是非JTF にご入会くださいますようお願い致します。
●竹本 林官氏(経済産業省 商務情報政策局 サービス産業課 課長補佐)挨拶
経済活力の原点は人にあり、持続的な経済成長のためには、新たなイノベーションを生み出す人材の育成が急務です。経産省が取りまとめた新経済成長システムでも、グローバルな視点での人材の確保・育成を進めることが、貴重な担い手を獲得する観点から重要であるとしています。多言語による業務対応が日常化している中、翻訳業務は単に語学力の高さだけでなく、関連技術や業界用語に関する知識や理解も要求されるなど、高度な専門業務となっており、翻訳者等の育成は企業がグローバルな競争を勝ち抜く上できわめて重要な課題となっています。JTFは20年以上にわたって翻訳検定を実施するなど、翻訳業界における人材育成に熱心に取り組んでこられました。今後も翻訳業界発展のために邁進されるよう期待いたします。
<ほんやく検定> 1級合格者表彰式
写真右 左から:
中森 昌代氏(日英翻訳 医学・薬学)
椿 明彦氏(英日翻訳 科学技術)
沖 省吾氏(日英翻訳 特許)
齊藤 隆博氏(日英翻訳 特許)
黒木 淳哉氏(英日翻訳 政経・社会)
岡安 恵子氏(英日翻訳 情報処理)
写真右下:中森 昌代氏 代表スピーチ


交流パーティーの歓談風景







【翻訳プラザ】
展示・デモコーナー 出展企業(50音順)
翻訳ソフト、辞書、CD-ROM、PC等の展示・デモ
出展社:
書籍・翻訳相談コーナー 出展企業(50音順)
書籍の販売、翻訳会社・翻訳学校の担当者との相談コーナー
出展社:
報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)
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