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翻訳者・翻訳会社・翻訳発注企業のためのJTF翻訳祭【主催:翻訳業界団体の日本翻訳連盟
「翻訳の原点翻訳業界の共通認識」〜常識のように言われていることは正しいのか〜
| ⇒翻訳祭のセッション内容はDVDで受講できます |
第16回JTF翻訳祭が10月12日、「翻訳の原点翻訳業界の共通認識〜常識のように言われていることは正しいのか〜」をテーマに、東京・八丁堀のマツダホールで開催された。メイン会場では、まず最初に、最近の翻訳界で大きい話題になったアーサー・ゴールデン著「さゆり」の翻訳者である小川高義氏の講演、次いで、井口耕二氏のコーディネーターにより、「翻訳者のアタマの中」というテーマのもと、様々な分野で活躍するベテラン翻訳者に小川氏も加わっていただいてパネル・ディスカッションが行われた。最後に、今年からJTF の理事に就任されているマーク・アタウェイ氏の講演が行われ、日本の翻訳業界でも大きい位置を占めるようになったローカリゼーション分野について詳しく解説していただいた。
地下1階のサブ会場では翻訳プラザが開催され、各種の企業が翻訳支援ツールやCD版辞書などを出展した展示・デモコーナー、およびJTF法人会員の翻訳会社を中心とする書籍・翻訳相談コーナーなどが参加者の注目を集めていた。
講演終了後には交流パーティーが催された。経済産業省の商務情報政策局サービス産業課からも企画官・高野芳久様はじめ3名のご出席をいただいた。また「ほんやく検定」の1級合格者8名が招待され、記念品が授与された。これら8名の翻訳者には、パーティに参加していた翻訳会社等のコーディネーターや営業担当者から熱心な接触があったようである。
【講演1】「翻訳は推理ゲームである」
小川 高義氏(文芸翻訳家、横浜市立大学国際総合科学部準教授)
翻訳はいろいろなものに例えられると思うが、訳者が捜査員となって作品の現場を推理していく「推理ゲーム」のように捉えることもできる。訳者は、冠詞、単数/複数形といった原文の言語面の情報や、訳出された日本語から見つかる常識的な矛盾点といったさまざまな手がかりをもとにしてあらゆる解釈の可能性を探っていくのである。こういった「推理する」姿勢で臨むと、過去に多くの大家が翻訳したエドガー・アラン・ポーの作品の訳においても、新しい解釈を見つけることが可能になる。また、実用的にも誤訳が防げるというメリットがある。
文学作品においては、作品の世界が構築されているかどうかが一番重要なことである。文芸ものの翻訳において世界を作るということは、その作品をもう一度語り直すことである。作品の現場の状況を映像的に再現し、一つ一つの場面を吟味して作品世界を丁寧に再定義するような形で日本語を書き起こす、そういった翻訳をしなくてはいけない。訳者の仕事は、単に「訳す」ということではなく、日本語担当のゴーストライターになったつもりで、日本語の別バージョンを「作る」ということではないだろうか。
【小川氏プロフィール】
1982年、東京大学大学院で修士号を取得し、同年から横浜市立大学に勤務。現在は準教授。
主な訳書は、ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』(新潮文庫)、アーサー・ゴールデン『さゆり』(文春文庫)など。最新刊は、エドガー・アラン・ポー『黒猫・モルグ街の殺人』(光文社文庫)。
【講演2】 「進化するグローバルローカリゼーションプロバイダと翻訳者への期待」
マーク・アタウェイ氏(ライオンブリッジ ジャパン(株) 代表取締役)
グローバルプロバイダとして、顧客の拡大するニーズにこたえていかなくてはならない。業界のトレンドや顧客の方向性が見えているのに、それに逆らってしまうようではいけない。最近はWeb2.0やSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)という流れの中、必要なときにネット上のシステムにアクセスすれば何でもできる、という状況が実現されつつある。顧客からも、部署単位や製品単位で管理していた翻訳メモリをネット上で一括管理できるシステムや、各プロジェクトの詳細、用語集、スタイルガイド、クエリーなどといったさまざまな情報が確認できるポータルサイトなどが求められている。
そこで、そのような要望にこたえるべく、Freewayというシステムを開発した。Webサービスを利用して、人の手間がかかることをできるだけ自動化し、効率化をはかろうというのがこのシステムの目的である。その特徴的なものとして、翻訳ツールLogoPortがある。LogoPortはオンライン中心の使用を前提にデザインされていて、翻訳者はデスクトップ上に何もダウンロードする必要がなく、ただネット上のデータセンターにある情報にアクセスしていけばよい。そのため、翻訳作業の効率性や翻訳メモリの管理などさまざまな点において利便性がある。
【アタウェイ氏プロフィール】
テキサス州ダラス生まれ。フロリダ大学でコンピュータ・サイエンスの修士号を取得。
日米両国の IT関連企業でソフトウェア・エンジニアなどとして勤務した後、1997年に Lionbridge Technologies, Incに入社。現在はライオンブリッジジャパン(株)代表取締役。本年6月、JTF理事に就任。
【パネルディスカッション】「翻訳者の頭の中」
〜翻訳しているとき、何を考えているのか・考えるべきなのか〜
<パネリスト>
(五十音順、敬称略)
アンゼ たかし(映像翻訳者)
小川 高義(同上)
倉橋 純子((有)知財工芸代表取締役)
山田 和子(実務翻訳者、文芸翻訳家)
<コーディネーター>
井口 耕二(実務翻訳者、JTF常務理事)
●翻訳は楽しいですか。
アンゼ:作業は楽しいです。(映像翻訳者は)映画の最初の観客になれるし、声優や脚本など、様々な分野の仕事や担当者と関わることができます。
小川:別の世界を作る楽しみや、作家の世界に自分も入っていく楽しみがあります。
倉橋:楽しみより苦しみのほうが多いですが、新しい仕事が来ると、「前の仕事が評価されたのだ」と、嬉しい気持ちになります。
山田:子供の頃から本が好きで、まず読者だったんです。その延長上に翻訳の仕事がある。深く読む機会を与えられたことに感謝しつつ仕事に取り組んでいます。
井口:再依頼が来たときとか、新しい知識を得たときには、嬉しさを感じますね。
●分からないときどうしますか。
倉橋:新しい技術は分からないし、単語も訳語の無いものが多い。何とかするのが大変です。
山田:小説の翻訳は分からないことばかり。翻訳は調べもの。できる限り突き詰める。「ここまで読んだのだ」と言えるような、最も深く読んだ読者になるよう心がけています。
井口:一般(実務)翻訳のほうが「わかること」が多い。ネットなどで調べられることが多いですね。
●どんなときに「分かった」と思いますか。
倉橋:特許でも、文化の違いによって国柄がある。そういう違いが分かると面白い。
小川:訳してみて、その作品が好きになったとき、「その作品が分かった」と感じます。
アンゼ:原作を読んで分かったのと同じように、訳した日本語でも分かったとき。
●その他に気を付けていることは。
小川:何気ないイディオムとか、誤訳のまま済んでしまう可能性がある。これが最もこわい。
井口:「知ってるつもり」がこわいですね。
山田:出版社によって書き方を変えることもあります。表記も重要ですね。
井口 耕二氏
左からアンゼ たかし氏、小川 高義氏
左から倉橋 純子氏、山田 和子氏
会場風景
【交流パーティでの挨拶】 東 郁男 JTF会長
昨年の翻訳祭は大阪で行われたため、東京での開催は2年ぶりであったが、参加者の数は確実に増えており、交流パーティーも毎回華やかになっている。このような催し物の成功は必ず、会員の増加と連盟の成長をもたらすものとなるであろう。
仕事というのは同じやり方をしていてもつまらない。また、同じやり方ばかりしていると、そこから後退が始まる。翻訳の仕事も厳しいところが多いと思いますが、その中で少しでも楽しみを見つけながらやっていくことが必要でしょう。今後も連盟を拡大していきたいと思っておりますが、課題も多数存在しており、これらは一朝一夕に解決できるものではありません。会員をはじめ色々な方々からご意見をいただきつつ、問題を一つずつ解決し、連盟の認知度、業界の向上を目指して頑張っていきたいと思っております。今後とも、皆様方からご協力や、厳しいご意見を頂きますよう、お願い申し上げます。
【来賓の挨拶】 高野 芳久氏(経済産業省 商務情報政策局 サービス産業課 企画官)
経済のグローバル化やIT化の中で翻訳に対する需要が非常に増大しています。皆様は、そのような不可欠なサービスを提供されて、まさに我が国の産業競争力の一部を強化する役割を果たされておられます。私は、経済産業省でビジネス支援サービスを担当しておりますが、この分野は今年7月に政府が発表した経済成長戦略大綱でも、今後最も発展が期待される分野と位置付けられており、中でも翻訳は重要なサービスの一つとなっています。皆様方には、改めて敬意を表するとともに、一層ご活躍頂きますようお願い申し上げます。
<ほんやく検定> 1級合格者
後列左から:佐藤 禅氏、平崎 肇氏
前列左から:多々良 順子氏、長田 真理子氏、笠井 暁子氏、
田口 有里恵氏、島津秋氏、堀内 麻衣子氏
【翻訳プラザ】
展示・デモコーナー 出展企業(50音順)
翻訳ソフト、辞書、CD-ROM、PC等の展示・デモ
出展社:
書籍・翻訳相談コーナー 出展企業(50音順)
書籍の販売、翻訳会社・翻訳学校の担当者との相談コーナー
出展社:
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