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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

翻訳セミナー情報 JTF翻訳セミナー(東京) セミナー受講ご希望の皆様へ

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2010年のJTF翻訳セミナー活動報告

第8回
開催日 2011年1月14日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:15 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「山本ゆうじの『翻訳速度平均時速650語の秘密(拡張版)』と翻訳道具箱スペシャル」
講演者 山本 ゆうじ(やまもと・ゆうじ)氏
秋桜舎 代表、言語・翻訳コンサルタント
概要 本講演では、効率と高品質を両立させる翻訳支援技術についてのさまざまなヒント、特に翻訳ソフト、ユーザー辞書共通仕様UTX、分かりやすい日本語表記ルール「実務日本語」を紹介する。翻訳祭で好評だった内容を大幅に拡張し、かつてないほど具体的な実例を示しつつ、実演をみっちり行う。また、十分な質疑時間で翻訳作業・翻訳支援に関わる日々の疑問を解消できる。プロ翻訳者向けの翻訳支援では、大量の翻訳を複数人数で並行して行い、厳密な用語および表記の管理が必要になる。統計翻訳は、後編集に時間と労力を費やすことが多い。一方、翻訳ソフトで主流のルールベース方式では、ユーザー辞書をカスタマイズして精度と効率を大きく改善できる。参加者は事前に『通訳翻訳ジャーナル』コラム「デジタル翻訳者の道具箱」http://goo.gl/6GVX3のオンライン記事(無料)を参照されたい。

講演のポイント:
◎翻訳現場と開発者・研究者の間の深遠なる溝――翻訳支援と概訳
◎なぜ日本語の翻訳支援用途では統計翻訳ではなくルールベース方式がよいのか
◎前編集・後編集という思い込み
◎翻訳ソフトの実例と実演
◎ユーザー辞書共通仕様UTX(実用的な用語形式)の紹介(詳細版)
◎実務日本語(分かりやすい日本語表記ルール)の紹介(詳細版)
◎「翻訳工学」に向けて
◎十分な質疑時間

【対 象】
○クライアント企業の方
○機械翻訳に興味のある翻訳会社・個人翻訳者の方
○機械翻訳研究者・開発者の方

⇒本セミナーの講演はDVDで受講できます

【講師略歴】
シカゴ大学修士を取得後、実務翻訳者として独立し、翻訳メモリーと翻訳ソフトを最適に統合するソリューションSATILA を開発。確実に用語管理をしつつ平均時速650語を実現。『通訳翻訳ジャーナル』など各種雑誌に連載・寄稿し、翻訳と英語教育関連の記事を200件以上執筆した。SDL 公認講師でもあり、翻訳メモリーの専門家として、教材を多数作成。翻訳ソフトについては、アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)で国際標準化団体LISAと協力しつつユーザー辞書共通仕様UTX の策定に関わる。実務翻訳者として現場で働く一方、企業に翻訳に関する総合的なノウハウを提供する。TOEIC 満点取得者。mixi では、3万人以上の参加者を持つ、プロ仕様・文章作成技法コミュニティーを主宰。

2010年度 第8回JTF翻訳セミナー報告

 フリー翻訳者にとっての翻訳速度は、時間あたりの報酬に直結するため、品質が落ちないなら、速いほどよい。フリー翻訳者として生計を立てられる一般的な翻訳速度は、原語で毎時約250語である。これを大幅に上回る平均時速650語を達成するための手法として、翻訳ソフト、新しい用語集形式UTX、実務日本語の3つについて山本ゆうじ氏(秋桜舎:http://transpc.cosmoshouse.com/)が語った。

翻訳ソフトの正しい活用法
 機械翻訳では、ルールベース機械翻訳と統計機械翻訳の2つの方式がよく使われる。市販の翻訳ソフトで使われるルールベース機械翻訳は、文法という「ルール」に基づく。翻訳者が、用語集を調整したユーザー辞書を通して、「何をどう訳すか」を100%管理して反映させる。一方、統計機械翻訳は、訳語を統計的に抽出してつなぎ合わせ、訳文が生成される。Google 翻訳などで使われ、注目を集めている。だいたいの意味を知る概訳では便利だが、日本語では精度が低い。どちらの場合も、訳文を完成させるには、人間による後編集をする。統計機械翻訳では、翻訳工程中に用語集が自動反映されず、別途、用語チェックが必要である。また修正点が不規則で、全体を読み直す必要があり、時間がかかる。一方、ルールベース機械翻訳では、「間違え方」にも規則性があり、修正しやすい。ぎこちなさはあっても、用語を正確に反映するため用語のチェックは最低限ですむ。そこで、どうやって充実した用語集を作成するかがカギになる。
 時速650 語の翻訳は、翻訳ソフトを活用し、訳文入力とチェックの時間を大幅に削減することで実現した。用語集を自動反映して、的確な訳の作成が短時間ででき、結果的にコストも下げられる。

作りやすく、使いやすい用語集形式UTX
 用語集の重要性は認識していても、時間や人手がなく用語集を作成できないクライアントは多い。用語集を作成するには、用語抽出、最適な訳語の決定、スタイル ガイドとの整合化、用語間の整合化をする必要があり、手間がかかる。しかし、用語集は、結局、クライアントのためのもの。一度きちんと作れば会社がなくなるまで使える「一生もの」の翻訳資産である。翻訳依頼時に用語集を配布することで、訳文が正確になり、修正の手間が省ける。用語集作成では、UTX を使うと効率が上がる。
 UTX(Universal Terminology eXchange)は、翻訳ソフトに指示して的確な訳をさせるユーザー辞書の形式である。翻訳ソフトとは無関係の用語集としても使える。以下の4つが特徴である。
● シンプル:タブ区切りのテキスト形式で、すぐに作れ、使える
● オープン:無料でだれでも作れ、使える
● 特定分野内で高密度:専門用語を翻訳知識として高密度に蓄積し、的確に訳せる
● 汎用的:さまざまな既存の用語集形式とUTX を相互に変換可能
 複数翻訳者がリアルタイムに辞書を共有・再利用でき、訳語の決定権を持つ辞書管理者が承認を行う。詳細はhttp://goo.gl/tR4hm を参照。

次世代の日本語表記を提案する実務日本語
 日本語の質は、和訳、英訳の両方で常に問題となる。IT やマニュアルの翻訳では、各社の表記がバラバラで、表記規則に合理性がない。慣習を漫然と引き継ぎ、無意味に複雑なので、結果的に表記規則が不徹底になる。実用文書では、合理的判断に基づいて、煩雑な表記を整理して収束させる必要がある。次世代の日本語表記として、実務文書のためのシンプルな表記規則(スタイル ガイド)「実務日本語」を提案する。分かりやすく明快で、翻訳しやすい日本語を目指す。ネット検索や翻訳ソフトなど電子文書活用にも対応する。英訳時の日本語原文が読みやすく、論理的なら、スムーズに翻訳できる。和訳では、不毛で無意味な表記規則に悩まずにすみ、チェックの労力とコストが削減できる。詳細はhttp://goo.gl/zegeS を参照。

 時速650語は、ツールを駆使して翻訳環境を整えることで、どの翻訳者もいずれは実現できるのかもしれない。翻訳ソフトを導入している翻訳会社や翻訳者はまだ多くはないが、いずれ一斉に導入する時代が来るだろうと思った研究会だった。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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