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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

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2010年のJTF翻訳セミナー活動報告

第9回
開催日 2011年2月8日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:15 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「ヤンマーのマニュアル翻訳者が語る、翻訳の実情と翻訳者の役割」
講演者 牧野 一成(まきの・かずなり)氏
ヤンマーテクニカルサービス株式会社 社内翻訳者
概要 メーカーのドキュメント制作部門に於ける社内翻訳者の仕事は、マニュアル翻訳だけに限らず、翻訳データベースの構築、用語集の管理、納品物のチェック、リライトから翻訳会社との交渉、多言語翻訳の発注、翻訳者のリクルートまで多岐にわたる。ひとりの「翻訳者」が「クライアント」としての役割も担うとき、翻訳業界に何を思うのか。翻訳支援ツールや機械翻訳の普及、XML化に伴うマニュアル翻訳の今後の動向を予測するとともに、どのような「翻訳会社」、「翻訳者」と長期的パートナーとして付き合って行きたいかを語りたい。また、社内翻訳者でしか経験できない翻訳業務の醍醐味(だいごみ)を紹介することで、あまり知られていないソースクライアントの翻訳に対する取り組みを理解いただければと思う。

講演のポイント:
◎広がりをみせる社内翻訳者の仕事と役割
 *本当の翻訳資産とは何か?
 *マニュアル翻訳の今後の動向
 *STE(シンプリファイド・テクニカル・イングリッシュ)による英文リライト
◎翻訳会社は発注兼務の社内翻訳者には注意せよ!
 *ソースクライアントに選ばれる翻訳会社とは?
◎フリーランス翻訳者との直接取引
 *長期的パートナーとしてのフリーランス翻訳者の可能性

【対 象】
○社内翻訳者の方
○フリーランス技術翻訳者の方
○翻訳会社の営業/コーディネーター/経営幹部の方

⇒本セミナーの講演は、DVDで受講できます

【講師略歴】
香港生まれ。米国マサチューセッツ州サイモンズロック大学文学部卒業。
日本帰国後、通訳・翻訳を含む多くの海外関連業務を経験する中で、徐々に翻訳の世界に魅せられる。数年のフリーランス活動を経験後、2007年よりヤンマーのドキュメント制作部門にて社内翻訳者として発注や翻訳レビュー、英文リライトを含む幅広い翻訳業務を担当。社内のパソコンの前で完結しない社内翻訳者を目指して、翻訳者が幸せになれる世界を夢見つつ、今日も良質な訳文作成に励む。

2010年度 第9回JTF翻訳セミナー報告

 メーカーの社内翻訳者というと、翻訳の内容について疑問があればすぐに開発者に聞いたり、翻訳で迷った場合は周りにいる翻訳者に聞くことで解決できるという、フリーランス翻訳者の持つ悩みを持たない、一見恵まれた環境にいる翻訳者と誤認識していた。だが実際は翻訳以外の仕事も同時に受け持たなければならず、たいへん忙しい立場に立たされているようだ。社内翻訳者事情を牧野氏が熱く語った。

ヤンマー社内翻訳者の仕事と役割
 ヤンマーは、1912年に滋賀県で創業したエンジンメーカーで、主な製品はディーゼルエンジン。世界各国にグローバル展開し、現在は売り上げの1/3以上を海外から得ている。ヤンマーの機能会社である、ヤンマーテクニカルサービス(YTSK)がヤンマーおよびヤンマーグループ会社向けドキュメント制作を担当しており、テクニカルライティング、翻訳、イラスト、DTPを主な業務として扱っている。
 YTSK では現在、翻訳の内製化を推進しており、翻訳会社との取引に加え、フリーランス翻訳者との直接取引も行っている。自分は技術翻訳の経験なしで社内翻訳者第1号として入社したが、研修所で新人技術者向けエンジン分解/組立研修を受講することで、エンジンの専門知識を習得した。また、英文テクニカルライティングの通信講座を受講することで、マニュアル翻訳で重要となるライティング技術も勉強した。
 ヤンマーの社内翻訳者の仕事は、以下に大別される。
1. 翻訳:各種マニュアルや社内規格文書、その他ドキュメントの翻訳を行う。重要なのが、改訂時に継ぎはぎで行われる差分翻訳(YTSK ではパッチワーク翻訳と呼んでいる)で、これは後で必ず改訂個所を翻訳メモリに登録しないと、原文と訳文がどんどん違うものになっていくので注意が必要な業務である。
2. 翻訳レビュー:必ずプリントアウトしてレビューする。スペル、用語・表現、スタイル、などを社内ルールに沿って、チェックする。
3. 翻訳メモリの運用/管理:メモリ作成、管理、メンテナンスを行う。非常に重要な仕事だが、メモリはツールであり、万能ではないことも肝に銘じる必要がある。
4. STE による英文リライト:シンプリファイド・テクニカル・イングリッシュ(STE)によりマニュアル品質を向上させる。STE とは、ASD-STE100(国際標準)に基づいた技術英文作成のルールと用語法。YTSK ではSTE 社内用語集の構築に取り組んでいる。
 以上は翻訳に関わる仕事の内容であるが、これ以外に重要な仕事として、翻訳者および翻訳会社を束ねるコーディネーション業務が挙げられる。そのため、社内で翻訳をコントロールできる専門家の存在が必要不可欠であり、今後社内翻訳者が目指すものは、プレイングマネジャー的ポジションであるといえる。

パートナーとしての翻訳者・翻訳会社
 「顔の見える翻訳会社」であることが重要事項の一つである。物理的に近くにいて、何かあるとすぐに来てくれるような会社と今後も取引をさせていただきたいと思っている。また、翻訳を理解できる経営者、レスポンスのよいコーディネータ、愛される営業などは最低限の条件であるが、「価格、品質、納期」より何よりも「信用」が重要と考えている。
 フリー翻訳者に業務を依頼するメリットは、価格、一定品質が確保できることに加えて、ダイレクトに翻訳業務の話が通じることも挙げられる。スケジューリングや社内での翻訳付随業務の工数増加などのデメリットもあるが、良い翻訳者さんとは今後もお付き合いを続けたい。

 最後の質疑応答では、牧野氏から翻訳会社の方々へ会社の特徴を尋ねるという逆質問が飛び出したが、それに対して数社から挙手があり、様々な翻訳会社の特徴、魅力を聞くことができた。この問いかけから、魅力のある翻訳会社と良い関係を築いていきたいという牧野氏の思いが伝わってきた。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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