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2010年のJTF翻訳セミナー活動報告

第7回
開催日 2010年11月11日 セミナー: 14:00 〜 16:40
テーマ 「あなたも翻訳家になれる 〜出版翻訳家の仕事術〜」
講演者 枝廣 淳子(えだひろ・じゅんこ)氏
有限会社イーズ 代表取締役、出版翻訳家・環境ジャーナリスト
概要 出版翻訳家として独り立ちするにはどうしたらよいのだろう? 環境の分野での翻訳にはどのような特徴やノウハウがあるのだろうか? 『不都合な真実』をはじめ、これまで20冊以上の書籍を翻訳してきた経験をもとに、環境分野での翻訳や、出版翻訳をめざす上での大事なポイントをお伝えしたいと思う。また、翻訳者を育成する講座を何年にもわたって主宰してきた経験から、「伸びる翻訳者、伸びない翻訳者」の違いや、「翻訳力を伸ばし続けるためのトレーニング」についても、お話ししたい。

講演のポイント:
◎ 出版翻訳家になるためのルート
◎ 買ってもらえる翻訳とは
◎ 翻訳力をつける勉強法
◎ 正確さを鍛える
◎ 読みやすさを鍛える
◎ 翻訳を仕事にするために
◎ 環境の分野の翻訳とは
◎ ステージアップをめざして

【対 象】
○出版翻訳家を目指している方
○環境分野の翻訳者の方
○出版翻訳・環境分野を取り扱っている翻訳会社の方

【講師略歴】
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。米国のアル・ゴア元副大統領の著書『不都合な真実』の翻訳を手掛けるなど、環境ジャーナリスト・出版翻訳家として幅広く活躍中。2003年、(有)イーズを設立。2つの会社を経営しながら、環境NGOの代表も務める。現在は翻訳者の育成にも力を注いでおり、翻訳者のたまごさんを応援する「トラたまコミュニティ」を主宰している。主な訳書に、『不都合な真実』『私たちの選択』『どんな相手ともうまくいく!「心の合い鍵」の見つけ方』など多数。

2010年度 第7回JTF翻訳セミナー報告

 枝廣氏は環境ジャーナリスト・出版翻訳家として幅広く活躍する一方で、翻訳者の育成にも力を注いでいる。今回の講演からは同氏の環境問題や翻訳に対する強い情熱とそれを支える客観的な分析および合理的な方法論、そして自らの知識や経験をフルに活用しつつ、周囲の力も生かす姿勢が浮き彫りになった。

出版翻訳家としての歩みと仕事の進め方
 最初の訳書はひょんなことがきっかけとなったが、それを自らチャンスに変え、確実にものにしたことで、出版翻訳家としての第一歩を踏み出した。環境の専門家としての実績も買われ、その後もコンスタントに訳書を出し続けている。ベストセラーとなった「不都合な真実」は10万ワード以上にも上る分量にもかかわらず、翻訳期間はわずか25日だったが、そうした厳しい条件に対応できた理由は2つある。1つめは同時通訳者としての経験を生かしたユニークな翻訳法(サイト・トランスレーション)、2つめは専門用語の調査を担当してくれる「リサーチチーム」とのコラボであり、これにより翻訳と調査の時間を大幅に短縮できた。

翻訳者育成の取り組み
 2つの会社を経営し、NGO の代表も務める枝廣氏は多忙を極める中で「日本に伝えたい良書は世界に数多くあるが、自分一人の力には限界がある」との思いから「自分でやるよりやってもらえる人を増やそう」と考えるようになり、翻訳者の育成にも取り組んでいる。そうした中で出版翻訳家に必要な要件や翻訳力をつける方法、翻訳を仕事として続けていくためのポイントが見えてきた。

出版翻訳家への道
 出版翻訳の世界に入る方法としては、リーディングや下訳者として実績を積んだ上で参入するケースが多く、持ち込みはまれだ。実務翻訳者としての専門分野を武器に進出するパターンもある。ただ、出版だけで食べていくのは難しく、ビジネス翻訳あるいは他の仕事で稼ぐ必要がある。

翻訳を仕事にするために―3つのステップ
 まずは「1. 正確かつ読みやすい翻訳ができる力」が必要となる。「翻訳とは著者の差し出すものを大事にそのまま、読み手に渡すことである」と考え「何も足さず、何も引かず」を心がけている。特に「正確さ」は重要であり、誤訳をなくすために英文法の力、細部への注意力、自分の誤訳を発見する力を培う必要がある。「読みやすさ」のカギを握るのは、文章の構成把握力、日本語の語彙、「ヘンな日本語」に対する感応度、読みやすさのチェックと向上のためのプロセスとコツである。大きく伸びる人の特徴として、常に「さらによいやり方はないか」考えながらトレーニングする姿勢がある。
 プロとアマの違いは「大量の翻訳を、短期間に、同じ質の高さで、こなせるかどうか」にあり、「2. プロとして仕事ができる自分マネジメント力」が求められる。「計画、実行、振り返り」のPDC サイクルを着実に回す力や時間/ストレス管理が不可欠で、特に自分の持ち時間を増やす努力、やるべき/ やりたいことの優先順位付け、時間当たりの効果・効率を上げる工夫が求められる。
 仕事のチャンスをつかむには「3. 仕事を見つけ、広げていくソーシャル・スキル」も欠かせない。社交性ではなく、人や情報につながる力である。似た者同士の強いネットワークではなく「知人の知人」のような「弱い絆」を大切にしたい。

効率的・効果的なトレーニングで仕事のチャンスをつかむ
 これらの能力を身につけ実際の仕事につなげる場として「トラたまコミュニティ」(http://es-inc.jp/toratama/) を開設し、「トラ」ンスレーターの「たま」ごさんはもちろん、元たまごの現役翻訳者にも役立つ様々な講座を提供している。各自のニーズに合わせて自分のペースでトレーニングができるという点で、従来の翻訳講座とは一線を画しており、価格も手頃で参加しやすい。

講演を聞いて
 今回は出版翻訳家による初めての研究会、しかも講師は著名な枝廣氏とあって、集まった聴講者は熱心に聞き入り、質問も活発に出た。紹介されたトレーニング法をはじめ、実務翻訳者にとっても大いに参考になる密度の濃い講演で、あっという間の2時間半だった。

報告者:飯村 育子(翻訳者)


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