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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

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2010年のJTF翻訳セミナー活動報告

第5回
開催日 2010年9月9日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:15 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「今、求められる映像翻訳者とは?」
講演者 水谷 美津夫(みずたに・みつお)氏
映像翻訳者
概要 ケーブルテレビの普及やブルーレイやDVDといった新しいメディアの発展によって新たな需要が生まれ、映像翻訳が注目を浴びている。この20年余り、映像翻訳そのものを教える翻訳学校は増えてきたが、歴史を踏まえて、日本の映像翻訳の現状やビジネスとしての映像翻訳の実情について知る機会は少ない。
そこで今回は、現役翻訳者として活躍中の水谷氏が映像翻訳の世界を知らない人にも分かるように、その歴史から現状、そして将来性について触れながら、求められる映像翻訳者像について語る。また具体的な実例を挙げて紹介し、映像翻訳と実務翻訳の違いについて分かりやすく説明する。

◎ 実務翻訳とエンターテイメント翻訳の違い
◎ 書籍のエンターテイメント翻訳と映像翻訳の違い
◎ 映像翻訳の特殊性(いわゆる字数制限やリップシンク)
◎ 日本における映像翻訳の歴史
◎ クライアントから望まれる翻訳者像とは?
◎ クライアンからの受注ルート(ソースクライアント:翻訳会社)
◎ 情報ツールの紹介
◎ 映像翻訳者の収入とは?
◎ 映像翻訳の今後や将来性について

【対 象】
○映像翻訳に興味のある方
○映像翻訳者の方(フリーランス・社内)
○映像分野への新規参入を検討中の翻訳会社の方

【講師略歴】
映像翻訳者。大阪芸術大学非常勤講師。 日本映画ペンクラブ会員。
「ジェネックス・コップ」、「プラハ!」などの劇場公開映画をはじめ、これまでに数百本の映画、ドラマ、ドキュメンタリーなどの日本語字幕・日本語版吹替台本を担当。また長年、大手の映像翻訳学校や大学で教壇にも立ち、その実践的かつアカデミックなアプローチは、受講生から絶大な信頼を得ている。また。日本になじみのない国や地域の映画を紹介する「世界一小さな映画祭」も主催している。

2010年度 第5回JTF翻訳セミナー報告

 アカデミー賞受賞作品の名場面集が映写され、映画館にいる様な雰囲気の中で第5回研究会が始まった。映像翻訳は一見、華やかなようだが、文字数や言葉遣い、短納期などの様々な制約の中で、万人にわかりやすい翻訳をしなければならないという過酷な作業を行わなければならないという。講師の水谷氏に、映画と映像翻訳について「いろは」から講義してもらった。

映画と字幕の歴史
 映画には115年の歴史がある。最初は無声映画だったが、字幕テロップの時代を経て1930年に「モロッコ」というトーキー映画の字幕が初めて日本語に翻訳されることになった。最初の頃は字幕の文字数も試行錯誤で決められていき、最終的に映像を楽しみながら無理なく読める文字数として、4文字/秒という数字が目安となった。また、一度に表示する字幕の文字数は約12文字(最大14文字まで)×2行までと決まった。

字幕・映像翻訳の歴史と需要

 1980年代半ばに一般家庭にもビデオが急速に普及し、海外のドラマが大量に輸入された。また、90年代になるとBS のWOWWOW 放送が始まり、楽しむ映画の字幕翻訳の需要が高まった。さらに2000年代になりビデオがDVD に変わり、2000年代半ばからは、劇場用の映画の吹き替え需要が高まっている。今後は、洋画も字幕ではなく吹き替えで楽しむ時代が来るかもしれない。
 この間、映像翻訳のツールとしてSST が導入され、非常に便利になった。SST を使えば、翻訳とセリフの長さとが合っているか、映像と翻訳がマッチしているかどうかなどの確認が行える。ただ、この便利なツールのおかげで納期も短縮され、現在は映画1作品の納期は1週間から2週間程度となっている。

映像翻訳の実際
 日本語と英語の一番大きな違いは自称詞(私、僕など) と他称詞(あなた、君など)である。英語ではそれぞれ、"I" と "You"の一語であるが、日本語では自称詞が何であるかにより人物のキャラクターが大きく左右されるため気をつけなければならない。また、会話する相手や状況によっても変わるため、注意を要する。日本語の自称詞は約110通りあると言われている。一方で他称詞も同様に100通り以上の言い方があるが、他称詞の場合はさらに複数形も含まれてくるため、200通り以上となる。
 例えば、I love you. という短い言葉を訳すときにも、100通り以上ある選択肢の中から自称詞、他称詞を決め、さらに同じように100通りの訳があると言われているlove の訳を決めなければならない。人物のキャラクターと会話の相手、その場の状況などから一つの訳を選択する。このような作業をすべての台詞について行わなければならない。翻訳者は、英語という記号からその言葉の先にある環境をイメージして最適な翻訳をしなければならない。いかにイメージできるかが重要である。
 そしてさらに字幕の長さという制約が入ってくる。例えば、I saw him yesterday in San Francisco. という台詞が2秒で話された場合、字幕は8文字までしか乗せることができない。「サンフランシスコ」という地名だけで8文字使ってしまう。この場合は地名はできる限り縮める。サンフランシスコの場合は「シスコ」で通じるのでシスコにしてしまう。その他の情報は、話の流れの中で重要な事柄のみを残し、他は切り捨てる。I が重要なのか、him なのか、San Francisco という場所なのかによって、「昨日シスコで見た」なのか、「俺はシスコで見た」なのか、シスコが重要でなければ「昨日あいつを見た」とも訳せる。

 洋画を見ながら、この訳は何となく変だなとか、私ならこう訳すのにと思ったことがあるが、実はすべての台詞が計算され尽くして訳されているということを知り浅はかな自分の思いを反省した。ジャンルを問わず様々な映画を翻訳しなければならない字幕翻訳者には、幅広い知識と好奇心が必要であり、何よりも映画、映像コンテンツが好きであるかどうかが問われるということだ。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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