本ウェブサイトでは、スタイルシートを使用しております。このメッセージが表示される場合には、スタイルシートをoffにされている、またはブラウザが未対応の可能性があります。本来とは異なった表示になっておりますが、掲載している内容に変わりはありません。

以下のリンクより、本文へジャンプができます。

JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

翻訳セミナー情報 JTF翻訳セミナー(東京) セミナー受講ご希望の皆様へ

| 活動報告一覧へ戻る |

2010年のJTF翻訳セミナー活動報告

第4回
開催日 2010年8月5日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:15 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「特許翻訳における市場及び品質の問題点」
講演者 倉増 一(くらます・はじめ)氏
株式会社トランスプライム 代表取締役
概要 特許翻訳は基本的に受注産業である。原発注者から翻訳者までのルートは多岐に渡るが、翻訳者が発注主から受注する形態は変わりない。翻訳単価は長期低落傾向にあり、従来はコンピュータとインターネットの普及により単価切り下げを生産性の向上でカバーできたが、これは限界に近づいている。リーマンショック以来、フリーランス翻訳者は翻訳料の下落と翻訳受注量の低下のダブルパンチに見舞われている。また、特許出願件数もピークを過ぎており、将来の潜在的な翻訳需用のさらなる低下が見込まれる。
品質面では英日・日英翻訳とも翻訳者と原発注者とのコミュニケーションの難しさや翻訳文の評価の曖昧さのために、多くの誤訳・不適格訳が生み出されており、これらの特許が将来有効でなくなる危険性も秘めている。
これらの現況を踏まえ、将来の特許翻訳のあり方を追求する。

【対 象】
○特許翻訳者の方(フリーランス・社内)
○特許分野を取り扱う翻訳会社の方
○特許事務所の方、企業の知財部門の方

⇒本セミナーの講演は、DVDで受講できます

【講師略歴】
1965年大阪市立大学理学部化学科卒業後、株式会社ブリヂストン入社。研究開発・知財部・研究開発管理を担当。知財部では主に国内・国外の争訟事件を担当し、あらゆる視野から特許を見る目を養う。その後ブリヂストンを退社し翻訳会社に入社。翻訳会社では自ら翻訳をする傍ら、後進の指導にあたる。その指導の集大成として「特許翻訳の基礎と応用」を出版。
2001年-2010年3月青山学院大学理工学部非常勤講師。
2005年4月株式会社トランスプライムを設立。
特許翻訳研究会を主宰し、翻訳者のレベルアップに貢献。
趣味:クラシック音楽鑑賞他

2010年度 第4回JTF翻訳セミナー報告

 特許翻訳は実務翻訳の花形と呼ばれる分野である。特に英訳者になるにはハードルが高く、英語力、専門の両方の力がないとなれない。倉増氏は、メーカーの知財部で主に国内外の争訟事件を担当後、50代で会社を辞め特許翻訳者になった。発注側から受注側に転じて即座に感じたことは、同じ業務でもどちらにいるかで重要性や捉え方が異なるということであり、一つのものの見方に固執するのは良くないということだったという。その後会社を興して独立し、現在は後進の指導に力を入れている倉増氏が、現在の世界の特許事情や特許翻訳、特許翻訳者について、さらに今後の特許翻訳のあり方などについて語った。

データで見る世界の特許動向
 現在、世界で主要な特許出願国は4極と呼ばれる、日本、アメリカ、ヨーロッパ、韓国である。この4極の動向をまず国別国内特許出願件数で見ると、日本のみが2005年をピークに出願数が減少している。また、この4極による外国出願時の第1カ国出願件数は、やはり日本への件数のみが減少している。国内、海外出願件数の構成を見ると、日本は極端に国内出願比率が高く(韓国も同様)、外国出願は全体の出願数の中の2割程度となっている(韓国は約3割)。出願分野別に見ると、国際特許分類H セクションの電気およびG セクションの物理・機械が主流分野となっており、これは4極でほぼ差がない。これらのデータは、以下の特許庁ウェブサイトに掲載されている。(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/kokusai/kokusai3/fosr_information.htm)
 これらのデータから見えるのは、日本の国内特許出願数の減少、日本の海外出願数の減少、海外から日本への出願数の減少であり、特許翻訳の需要は減少傾向にあると言える。

特許翻訳市場
 国内の特許出願数の減少と共に、近年の不況の影響を受け、2008-2009年をピークに急激に特許翻訳市場が縮小している。特許数減の他、単価切り下げが主な原因である。

特許翻訳者について
 特許翻訳単価は1980年頃がピークで長期間下落し続けている。単価下落を補うように、ワープロやコンピュータの普及、インターネットの普及に伴い、翻訳の生産性・品質は向上してきた。しかし、現在は生産性向上が頭打ちとなり、単価のみ下落しているため、翻訳者にはきつい状況となっている。
 生産性を上げるための様々なツールも出てきてはいるが、これらは使いこなせて初めて生産性が向上する。翻訳支援ツールや、用語の一括変換など、能率が良いと感じるかもしれないが、もっとも能率の良いのはベタ打ちである。訳文を打ち込む前の、原文読解、技術理解のための調査、専門用語探索、英文の構造決定(英訳の場合)、等の作業を効率化させることで、生産性を上げることができる。そのための投資はツールにではなく、自分の頭に対して行う。技術・英語両面の幅広い知識を吸収することだ。自分の経験では、ツールに頼りすぎる翻訳者の翻訳は質が低いと感じている。

特許翻訳の今後
 不況の波を受けている特許翻訳業界の問題点は、他の翻訳分野同様、典型的な受注産業であることにある。そのため、受注産業からの脱皮が大きな鍵になるだろう。本来翻訳だけが特許権利化業務の中で独立していること自体が不自然なので、国内出願と外国出願を一体化した業務体系を提案したい。具体的には外国出願の可能性のある発明は最初から英文で明細書を起草する。そのようなサービスが提供できれば、原発注者から見てもコスト・品質的に魅力的に映るだろう。ただし、このモデルは弁理士法との整合性が必要である。

 倉増氏と同年代の聴講者が多い中、今後の身の上相談のような質問も飛び出し、定年後第二の人生で特許翻訳を目指している人が多いことが伺えた。淡々とした口調であるが、しかし事実と経験に基づいた力強いアドバイスに、後進育成に力を入れている同氏の思いが伝わった。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


活動報告一覧へ戻る

ページトップへ