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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

翻訳セミナー情報 JTF翻訳セミナー(東京) セミナー受講ご希望の皆様へ

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2010年のJTF翻訳セミナー活動報告

第2回
開催日 2010年6月10日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:15 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「元気の出るIT翻訳 〜負けないIT翻訳者をめざして〜」
講演者 高橋 聡(たかはし・あきら)氏
IT翻訳者、JTF標準スタイルガイド検討委員
概要 かつては、翻訳需要がほぼ無尽蔵であるとさえ言われ、実務翻訳の中でも常に注目分野だったIT翻訳業界も、最近はだいぶ元気がなくなっているように思われる。IT業界そのものの冷え込み、MLVの出現、機械翻訳の進化といった諸要因から、厳しい価格競争とパイの奪い合いが生まれ、翻訳会社はもちろんのこと、翻訳者個人の受注単価も、頭打ち状態から、ここ数年の経済状況でさらに下落方向へと向かっている。その一方で、翻訳支援ツールなどの普及から、翻訳者としての資質や立場そのものが問われることも多くなってきている。
そんな状況の中で、「IT翻訳者」という看板を掲げ続けていくために、今どんな差別化が可能なのか、また必要なのか。なるべく多くの実例を挙げながら、IT翻訳者が元気になれる方向性を考えてみたい。

【対 象】
○IT翻訳者(フリーランス・社内)、IT翻訳志望者
○IT分野の比重が高い翻訳会社の方

⇒本セミナーの講演は、DVDで受講できます

【講師略歴】
翻訳歴は25年に及び、その前半は学習塾講師との兼業としてコンピューター関連のほか各種の分野を経験。後半は、翻訳会社の社内翻訳者として、またフリーランス翻訳者としてほぼ一貫してIT翻訳とローカリゼーションに携わっている。翻訳支援ツールなどの新しい技術を導入することも、どちらかといえば好きである。
IT翻訳の多くのクライアントが作成しているスタイルガイドに接するうちに、そのあり方を問い直したいと考えるようになり、本年度、JTF標準スタイルガイド検討委員会に参加している。

2010年度 第2回JTF翻訳セミナー報告

 翻訳業界の不況の最前線と言っても過言ではないIT 翻訳。景気の良い話はまったく聞かれない分野であるが、この分野でがんばっている翻訳者は少なくない。第2回研究会は、翻訳全般に四半世紀、IT 業界に10年以上携わってきた高橋氏が、IT 翻訳業界の歴史から現在にいたるまでの経緯、さらに現在の状況を分析し、この分野で生き残っていくためにはどうすればよいかを語った。

IT 翻訳の過去と現状
 IT 翻訳業界は、IT バブル期の1999年〜2001年がもっとも良かった時期で、その後バブルがはじけても急激に悪くなることはなく、2005年頃まではある一定水準を保っていた。その後、ツールの普及もあって単価は現状維持かやや下降という傾向だったが、2008年の世界不況で一気に窮地に陥った。
 現在は、大量かつ短納期案件の発生、アジア各国ベンダーの攻勢、価格大崩壊、コミュニティなどでのボランティア翻訳者の台頭、機械翻訳の導入など、IT 翻訳は価格も仕事量も翻訳の質も下降の一途をたどっている。
 ただ、翻訳の質の低下に関しては、非日本語ネイティブが訳した翻訳物では日本人読者が満足できないという事例が多数発生し、日本人翻訳者に仕事が戻ってくるケースもいくらかあるようだ。しかし、根本的な不況要因は払拭されていない。このような中でIT 翻訳者はどのようにして生き延びていったらいいのだろうか?

IT 翻訳の将来
 繰り返しや定型的な表現が多いIT 分野の翻訳の一定部分は、最終的に機械翻訳(MT) と、機械翻訳された訳文を編集して読みやすくする後工程(PE) 作業に移行するだろう。それ以外は、MT のみでPE 無しの訳文でも良しとする分野や、ボランティア翻訳者が活躍する分野が増えてくるだろう。それでも、専門の翻訳者が翻訳しなければならないだろうホワイトペーパーやテクニカルドキュメント、web ページなどの分野は残るだろうと思われる。

負けないIT 翻訳者になるには
 IT 翻訳者が生き残るための方法はいくつもある。まず、質的、量的な付加価値を付けること。一日の翻訳量が2,500ワード以上あれば、翻訳会社からも重宝される。翻訳量の向上は、売り上げアップのためだけでなく、その努力の過程で他の力もつくので実践をお勧めする。MT に取って代わられそうな分野には見切りをつけ、新しい翻訳分野を拡大する。その逆に、MT のPE 作業に徹する専門エディターになる。さらに、IT 以外の分野に進出し、活路を見いだすのも生き残るための一つの方法である。IT 翻訳の内容は常に新しいので、新しい技術についていけるようにしておくこと。ツールを駆使することで生産性が向上することが多い分野なので、新しいツールも積極的に導入していく姿勢も大切である。
 また、翻訳者として生き残るためには人とのつながりが非常に大切である。翻訳会社とのつながり、翻訳者同士のつながり、IT 分野の専門家とのつながりなど、日頃から様々な人と積極的につながるようにすることで、自分の知識が増えていったり、思いもよらなかったところから仕事を受けたりすることもある。Blog やTwitter などで積極的に自分を発信すると他人からのフィードバックも多くなりつながりが増える。

IT 翻訳の魅力
 新しい概念、新しい用語を、それらが世の中に普及する前に知ることができるのは大きな魅力である。またパソコンや電子ツールが好きな人ならば、それらを駆使して効率を上げることができる分野であり、ツールの工夫や改善を常に行いながら翻訳を行えるので楽しい。さらに、パソコンやツールを実際に使っていれば、その知識や経験が翻訳に生きてくるので、ツールと翻訳対象が近い「恵まれた」分野といえるだろう。

 「負けないIT 翻訳者」というタイトル通り、この分野で試行錯誤を続けながら奮闘している高橋氏の様々な思いやIT 翻訳の魅力を知ることができ、非常に元気づけられた研究会であった。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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