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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

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2008年のJTF翻訳セミナー活動報告

第9回
開催日 2009年2月12日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:30 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「印刷会社の言語変換サービスの実情」〜海外展開による翻訳需要の現状と将来の方向性〜
講演者 ●福永 毅(ふくなが・たけし)氏
大日本印刷株式会社 理事
●鈴木 英之(すずき・ひでゆき)氏
同社 GMM本部 本部長
概要 日本語という閉じた言語圏に所在する印刷会社である大日本印刷(DNP)にとって、顧客である日本企業の国際化に対応するためには、言語の壁を越える(Beyond the Walls of Languages)言語変換サービスが不可欠である。同時にDNPは、海外市場での事業活動をベースに、英語をマスター言語とする文化編集、文化翻訳などに携わった長い歴史を持っている。
本講では、日本企業の海外市場への進出、および海外企業の日本市場への進出という双方向で、「印刷の国際化」を推進するというDNPの立場から、DNPの言語変換に関する現状と将来の方向性を解説する。

【対象】
○翻訳会社の経営幹部・営業・コーディネーター・QAの方
○一般企業の翻訳発注担当者の方
○出版社の翻訳出版担当者の方

【講師略歴】
●福永 毅(ふくなが・たけし)氏
大日本印刷株式会社 理事
68年大日本印刷に入社、外国部に配属。
71年から88年ニューヨーク駐在、DNPアメリカ副社長。
出版印刷および商業印刷の米国市場を開拓し、印刷品質の向上と国際競争力の構築に尽力。
主な国際出版企画として、集英社「世界写真全集」、およびベネッセ(福武書店)と米国メトロポリタン美術館のジョイント・ベンチャーによる「メトロポリタン美術全集」の契約、米国編集、多言語販売、印刷を担当。
88年海外事業部、海外営業本部長、98年GMM(グローバル・メタ・メディア)本部長、2004年に本社理事。GMM本部担当。

●鈴木 英之(すずき・ひでゆき)氏
大日本印刷株式会社 GMM本部 本部長
86年大日本印刷に入社。
市谷事業部に配属、出版印刷営業に従事。
その後、出版印刷関連の新規事業開発として、インターネット書店「専門書の杜(もり)」、デジタルコンテント+オンデマンド本販売サイト「ウェブの書斎」の立ち上げ、およびBOL(ベルテルスマンオンライン)のロジスティクスセンター構築・運営などに携わる。
2004年からGMM本部GMS(グローバル・メディア・サービス)研究所に所属し、情報メディア業界の調査・分析、海外メディア企業とのネットワーク構築などに携わる。
2008年にGMM本部長。

2008年度 第9回JTF翻訳セミナー報告

 印刷会社と聞いて連想するのは、本や雑誌の印刷ではないだろうか。しかし、印刷する情報は単なる「活字」の羅列ではなく、内容(コンテント)のある著作物である。印刷会社としては、出版社を始めとするメディアと連携して、紙の上に印刷される情報、即ちコンテントを開発し、新しい企画を創り出すことで自社の売上を拡大するという発想にたどり着く。さらに、これらを世界中に流通させたいと考えると、日本語以外の多言語への変換(翻訳)が必須となる。第9回研究会では、一見翻訳とは関係なさそうな大日本印刷株式会社(DNP)の取り組みについて、非常に興味深い話を聞かせていただいた。

大日本印刷の海外市場開発の歴史
 DNP の海外市場開発は、1970年代の米国市場において、出版印刷の事業領域から始まった。当時の米国著作権法には、有名な保護貿易条項である生産地条項(Manufacturing Clause)があり、これが最大の障害であった。生産地条項とは、米国民あるいは米国の市民権を持つ人が著者であり、その著書を米国以外の海外で印刷・製造して米国に持ち込む場合、米国内ではその著作権を保護しないという内容であった。即ち、日本から米国への印刷物輸出を止めてきた法律である。この壁を乗り越えるために、海賊版を作ることがかえってコスト的に高くつくような高級カラー上製本、即ち高級美術本や高級写真集にターゲットを絞って、米国の出版社を開拓していった。
 同時に、米国出版社を始めとする海外顧客の高い品質要求を背景に、DNP の印刷品質を改善していった。1978年のフランクフルトブックフェアで、初めて日本製造を条件として翻訳出版権(Foreign Rights)の取引が成立し、世界の出版界で日本の印刷品質が欧米のそれと対等に評価されることになった。これまでにDNP は、3,000タイトル以上の書籍を日本で製造し、米国や欧州などに輸出してきた。

国際共同出版、英語マスター版構想、DEP (Digital Editorial Pipeline)
 日本のDNP の印刷サービスを海外に輸出する一方で、DNP はコンテントの価値に着目するようになる。1980年代以降、小学館、集英社、講談社、ベネッセ(福武書店)など日本の有力出版社と、米国を始めとする海外の出版社とを結び、海外から日本への翻訳出版企画を、書籍や雑誌の形で創出した。
 さらに、海外コンテントの輸入にとどまらず、コンテントをゼロから共同開発した。日本の出版社と海外の出版社・美術館などを結んで、独自のコンテントを米国ニューヨークで開発し、ニューヨークから世界へ流通させる。このような国際共同出版プロジェクトを実行するためには、国際的に見て「閉じた言語」である日本語には多くのハンディがある。そこで、日本市場だけでなく、欧米市場やアジア市場までをターゲットとするために、コンテントの原型をすべて英語で開発する英語マスター版構想にたどり着いた。
 国際共同出版の概念は、DEP (Digital Editorial Pipeline) という、一種の国際ヴァーチャル編集室概念に発展している。日本の科学月刊誌である「ニュートン」は、日本→イタリア→スペイン→香港→中国(北京)と、様々な言語版(edition)に発展していったが、これを実現したのは、英語をマスター言語とし、各国の(各言語圏の)出版社が持てるコンテントを出し合って、共同でコンテントを創り出すDEP の考え方であった。

 大日本印刷の新たな取り組み:CNGL(Centre for Next Generation Localisation)
 CNGL は、アイルランド政府が主導し、アイルランドの4大学を始めとする研究開発メンバーと、IBM、Microsoft、Symantec、DNP など9社の企業メンバーによって構成される、次世代多言語変換技術開発プロジェクトである。DNP は、このCNGL によって開発される技術を情報メディア業界に応用し、新しいビジネスモデルを開発することを目的としている。日本語圏という閉じた言語圏に所在する印刷会社であるDNP にとって、「言語の壁をどう越えるか」(Beyond the Walls of Languages)という大テーマを克服するために、CNGL は大きな力になりうるだろう。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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