本ウェブサイトでは、スタイルシートを使用しております。このメッセージが表示される場合には、スタイルシートをoffにされている、またはブラウザが未対応の可能性があります。本来とは異なった表示になっておりますが、掲載している内容に変わりはありません。

以下のリンクより、本文へジャンプができます。

JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

翻訳セミナー情報 JTF翻訳セミナー(東京) セミナー受講ご希望の皆様へ

| 活動報告一覧へ戻る |

2008年のJTF翻訳セミナー活動報告

第8回
開催日 2009年1月8日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:30 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「ネイティブから見たインベスターリレーションズ(IR)業界における日英翻訳」
講演者 マーク・スティーブンソン(Mark Stevenson)氏
イー・アソシエイツ株式会社 翻訳事業部 トランスレーター・エディター
概要 国内の株式市場に占める外国人投資家の割合は、ここ数年で過半数を超えるまでに高まっている。金融危機による一時的な影響はあるにせよ、経済のグローバル化に伴い、今後も外国人投資家へのIR活動が重要視されることは間違いない。しかし、英語版のホームページやIR資料の品質が低いために、株価だけでなく企業ブランドまでも下げてしまう恐れがある。IRの品質次第で企業は外国人投資家から信用を高めるか、信用を失って株価を下げるかが決まる。

そこで今回は、証券・金融・会計等の専門家を擁し、他業種にわたる企業の決算短信、アニュアルレポート、プレスリリースの翻訳サービスを提供しているイー・アソシエイツ(株)のスティーブンソン氏をお招きし、「ネイティブから見たインベスターリレーションズ(IR)業界における日英翻訳」について講演いただく。日本と欧米とではIRに関する基本的な考え方は少し異なる点もあり、特に英語でのIR活動では大幅な差異が見受けられる。IRにおける英訳を語る前にまずIRとは何か、何のためにやるのかについて説明し、日本企業の外国人投資家に向けたIR活動及びIR翻訳(日英)の実情や問題点について述べる。またIR翻訳の品質を上げるためのポイント、日本人翻訳者とネイティブ翻訳者の長所と弱点にも触れる。

【対象】
○IR・ビジネス分野の日英翻訳者の方
○翻訳会社のチェッカー・コーディネーターの方
○企業の英語IR活動をサポート・担当する方

⇒本研究会の講義内容をDVDで受講できます

【講師略歴】
オーストラリアのパース市出身。
今回日本に来て3年目。
パースの大学では日本研究と金融学を専攻。
97年関西外国語大学に一年留学。
卒業後大学院に進学、しばらく金融学の講師を務める。
大学院の卒論をベースにした共著論文が米の学会誌に掲載される。
2005年からフリーランスの翻訳者としてビジネス英訳を始め、2007年10月から企業IR・広報活動を支援する会社イー・アソシエイツにて翻訳・エディットを担当。
現在日本証券アナリスト協会CMA(1次)を目指して勉強中。
趣味は水泳、バスケ、洋画・邦画。好きなOSはGentoo Linux。
日本翻訳者協会(JAT)会員。

2008年度 第8回JTF翻訳セミナー報告

 外国人投資家の増加に伴い、日本の各企業は英語での企業情報の提供(IR 活動)を積極的に行うようになってきている。IR(インベスター・リレーションズ)とは、日本では、投資判断に必要な企業情報を提供することで、市場で適切な評価を受けることを目的としている(日本IR 協議会)が、欧米では株価向上を目的としている(全米IR 協会)ため、日本企業によるIR 情報が必ずしも外国人投資家の満足するものでない場合が多い。英語ネイティブで金融学の専門家であるマーク・スティーブンソン氏が、日本と欧米のIR 活動の違いや日本におけるIR 活動の改善点について語った。

IR 活動とは誰のためのものか?
 最初に、IR 活動の意義について、日本と欧米の違いを見てみると、日本企業は「適正な株価の形成」、「企業・事業内容の理解促進」、「株主・投資家との信頼関係の構築」などを重要な意義に挙げている。一方で欧米企業は「(自社の)株価の向上」、「企業イメージの向上」、「アナリストカバレッジの拡大」を重要な項目として挙げている。また、日本企業の海外投資家向けのIR 活動の目的としては、「コンプライアンス」、「海外投資家を増やすため」、「既存株主の長期保有の促進」、「海外投資家の情報ニーズへの対応」、「海外投資家への公正な情報開示」などが挙げられている。
 海外投資家向けのIR 活動としては、英文アニュアルレポートや英語ウェブサイト、英文会社案内の作成、決算短信やプレスリリース、国内説明会資料、株主総会招集通知などの英訳などがある。

IR 翻訳について
 IR 翻訳とは、IR 活動のためのこれら文書を日本語から英語に翻訳することであるが、上記のように日本と欧米ではその目的が異なるため日本語をそのまま英語に置き換えるだけでは全く意味のない英文となってしまう場合がある。このような違いを理解して翻訳できる翻訳者が求められているが、IR を専門としている翻訳者はもとより、IR に特化した翻訳会社も非常に少ないのが現実である。
 また、たとえこのような違いを理解している翻訳者や翻訳会社がいても、発注元である企業がこれを理解していないと、せっかく良質な翻訳物ができても、企業側で改悪編集されてしまう可能性がある。

IR 翻訳者に求められるもの
 金融・財務・会計の知識が求められるが、その他に、数字に対する正確性、ビジネスに関する幅広い知識、業績・証券レポートの書き方を知っている、過去資料の読み込み(日英両方)を厭わない、硬い文書も生き生きとした文章も書ける、などもIR 翻訳者として持っていてほしい資質である。

IR 翻訳の問題点
 日本と欧米のIR 活動の違いや日英の表現の違いなどから、日本のIR 関連文書は欧米の投資家にとって読みにくかったり、理解できない場合もある。例えば、財務情報の通貨単位を円で書いても欧米人にはピンと来ないだろう。ドルに換算した数値も併記することによって読みやすくするような努力も必要である。
 翻訳を発注する日本企業に対する要望は、1. 会社あるいは業界情報の提供、2. 過去の英語にとらわれない柔軟な姿勢、3. 英訳を見直し、最終稿に至るプロセスでも翻訳者を介在させてほしい、4. 日本語資料の作成が決まった時点で翻訳者に知らせてほしい、5. 投資家からのフィードバックを求めて翻訳者に知らせる、などがある。翻訳者を英語だけでなくIR の専門家として信頼し、両者が協力してより良い海外投資家向けIR 活動ができることを切に望んでいる。
 日本企業発の英語文書は、ネイティブの目から見るとまだ様々な問題点を抱えている。この問題点に発注者である企業の担当者がまず気付き、問題点を一緒に解決していく姿勢を持つことが重要である。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


活動報告一覧へ戻る

ページトップへ