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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

翻訳セミナー情報 JTF翻訳セミナー(東京) セミナー受講ご希望の皆様へ

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2008年のJTF翻訳セミナー活動報告

第7回
開催日 2008年12月11日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:30 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「ローカライズにおける品質とはなにか - BEA Systems の実例より」
講演者 中村 功(なかむら・いさお)氏
元日本BEAシステムズ株式会社 ローカリゼーション部、現日本オラクルインフォメーションシステムズ株式会社 サーバグローバライズ マネジャー
概要 ローカライゼーションの黎明期から今日に至るまで、翻訳品質は、ローカライズに関わるすべての人たちの最大の関心事であり、懸念事項であり続けている。果たして、この間にローカライズの『品質』は、どれほど向上したか、また、今後も品質は、最大の懸念事項であり続けるのであろうか。
先日、日本オラクルに統合された日本BEAシステムズでは、ローカライズ品質を向上・安定させるべく、翻訳者とクライアントのコラボレーションに関して、いくつかの斬新な試みを行っていた。本講では、これらの実例に基づき、インターネット時代におけるクライアントと翻訳者の関係と、それがローカライズの品質にどのような影響をもたらすのかを検証する。

【対象】
○ローカライズ翻訳会社(PM・QA・営業)の方
○ローカライズ翻訳者の方
○クライアント発注担当者の方

⇒本研究会の講義内容をDVDで受講できます

【講師略歴】
1993年、ボーランド株式会社に入社。以来、主に、コンピュータ言語製品、ミドルウェア製品のローカライズに携わる。
2003年より、日本BEAシステムズにおいて、日本語に加え、中国語(Simplified, Traditional)、韓国語のローカライズを開始。
今年10月、米国Oracle社のBEA Systems 買収に伴い、日本オラクルインフォメーションシステムズに転籍。
現在は、インターナショナライゼーション QA、およびコンサルティングを担当する、サーバー グローバライゼーション テクノロジーに所属。

2008年度 第7回JTF翻訳セミナー報告

 翻訳の品質向上は、翻訳業界の永遠のテーマの一つであるが、中村氏は日本BEA システム(現日本オラクルインフォメーションシステムズ)でこのテーマに真正面から取り組み、いくつかの斬新な試みを行っていた。その一つにLMO(Localization Management Office) モデルがある。LMO がソースクライアントと翻訳会社の間の仲介としての役割を担うことで、作業の効率化と役割の明確化が図られ、ひいては翻訳の品質自体も向上させようというモデルである。このモデルを導入するまでに翻訳の品質向上のために試行錯誤した経験と、モデル導入による効果を中村氏が語った。

良い翻訳と悪い翻訳の見極め
 良い翻訳とは悪い翻訳の無い翻訳のことである。では、悪い翻訳とは何だろうか。日本語がわかりにくい、スタイルガイドに沿っていない、用語が統一されていない、などが挙げられるが一番悪いのは最もクリティカルである数字の間違いおよび誤訳である。翻訳には、原文を理解するというReading のプロセスと、訳文を作成するというExpression のプロセスがある。Reading プロセスで悪い翻訳が発生する原因としては、翻訳者の英文読解力の不足、技術的知識の不足、および原文が悪文であることなどが挙げられる。この中で原文が悪文である、というのは非常によくあることで、その原因は技術者がマニュアルを書いていたり、ひどい場合には技術者のメモ書きやプログラム中のコメントを集めただけでマニュアルにしているケースもある。Expression プロセスで悪い翻訳が発生する原因としては、訳抜け、用語の不統一、不自然な日本語、スタイルガイド違反などがある。Expression エラーは、指摘が容易なため、スタイルガイドや用語集の遵守が偏重されるきらいがあるが、実際にはReading エラーのほうがより深刻な問題を引き起こす場合が多い。ソースクライアント、翻訳者とも、どのようにしたらReading エラーを減らせるか、について、常に思いをめぐらせることが重要である。

LMO モデル
 このモデルの基本的な考え方は、ソースクライアントと翻訳会社、翻訳者の役割分担を明確化し、特定の人に特定の仕事を依存しないようなシステムを構築することである。必要な情報はすべてインターネット上に集約し、一つのプロジェクトにかかわっているメンバーすべてが共通の情報を共有できるようにしてプロセスを透明化する。ソースクライアントや翻訳会社はレビューやテストに参加せず、アウトソーシングでテスタ/レビューアを確保し第三者的視点で業務を遂行してもらう。すべての役割と責任を明確、明文化し、だれがそのポストについてもできるようにする。LMO はソースクライアントと翻訳会社、翻訳者の間に入り、それぞれの仕事をサポートする。
 このようなLMO モデルを導入することで、クライアントと翻訳者の距離は近くなり、高レベルでの情報共有が可能となる。また、誰かが突然いなくなることでプロセスが中断するようなことがなくなり、ボトルネックが発生しにくくなる。

 現行のLMO モデルには、収益構造や人依存など、解決すべき問題点も少なくない。また、BEA システムズが買収されたため、今後もこのモデルを継続できるか、不透明な点も多い。ただ、これまでのところ、BEA システムズのローカライズでは、効率化と品質の向上において、LMO モデルは期待以上の成果を収めており、ローカライズにおける一つのスタイルを確立しつつある。
 LMO モデルは、ローカライズにおけるコラボレーションのあり方について、一石を投じるものであるが、その中核は、ローカライズに携わるすべての人達が主体的にプロジェクトに取り組むべきであるという、ごくごく基本的な考え方にある。LMO モデルという『形』よりも、この考え方が広く翻訳業界に浸透することを願っている。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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