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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

翻訳セミナー情報 JTF翻訳セミナー(東京) セミナー受講ご希望の皆様へ

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2008年のJTF翻訳セミナー活動報告

第6回
開催日 2008年11月13日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:30 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「シリコンバレーに見る小規模高収益型プロフェッショナル集団のあり方」
講演者 廣瀬 紀彦(ひろせ・のりひこ)氏
株式会社インターナショナル・インターフェイス 代表取締役
概要 売上高1億円に満たない会社が半数を超える翻訳業界。世の中には中小零細=低収益、大企業=高収益の方程式がイメージされる。規模の経済は利益率の向上に寄与することも多い。しかし、翻訳業が労働集約型の大量生産モデルに入ってしまう場合、外注費の弾力性が乏しいために利益率は上がらず、厳しい価格競争にさらされて、そこにいる誰もが疲弊してしまう。翻訳会社にとって、より知識集約型を追求した小規模高収益型経営を目指してみるのも一つの選択肢ではないだろうか。
本セミナーにおいて、さまざまな小規模プロフェッショナル集団が集結し、高収益を上げているシリコンバレーでのモデルを紹介し、小規模翻訳会社のあり方についての提言を行う。

【対象】
○翻訳会社の経営幹部の方
○今後の翻訳業界を考える方

⇒本研究会の講義内容をDVDで受講できます

【講師略歴】
1964年生まれ。
1990年NTT入社。
1992年ドコモ設立とともに転籍。システム開発、事業計画、新規事業企画、マーケティング、国際投資、と幅広い分野を経験。当初メンバーとしてiモードの仕様書を作成。
1999年より米国シリコンバレーにてベンチャー投資提携の責任者。
2003年6月ドコモを退職し、技術提携コンサルタントとして、数多くの日米企業間の戦略投資提携、技術調査、マーケティング、ビジネス・コミュニケーションに携わってきた。
スタンフォード大学、UCバークレーをはじめ招待講演多数。
2006年6月より、自らが2000年に設立した(株)ソク訳の代表取締役にも就任するとともにインターナショナル・インターフェイスに社名変更。 上智大学大学院修了。カーネギーメロン大学経営大学院にてMBA取得。

2008年度 第6回JTF翻訳セミナー報告

 シリコンバレーの小規模高収益型プロフェッショナル集団の経営手法に学び、同じく小規模な翻訳会社の経営に生かせないか。かなり突飛な組み合わせではあるが、日本の翻訳会社も、知識集約型を追及して、小規模高収益型経営を目指してみたらどうか。シリコンバレーでベンチャー企業のコンサルタントとして活躍してきた廣瀬氏が、その経験と知識を基に翻訳業界の発展へ向けて非常に有益なアドバイスを贈ってくれた。

シリコンバレーのベンチャー企業
 ベンチャー企業が育つには、技術やアイデアだけでなく、その企業を育ててくれる多くの経験豊富なプロフェッショナルの力が必要である。特に、ベンチャーキャピタルと弁護士の協力が非常に重要である。アメリカではベンチャーキャピタルがベンチャー企業を育てると言われているように、資金を提供するだけでなく、経営コンサルティングも熱心に行う。また弁護士は、会社の設立から資金集め、従業員との契約などの業務に対して実務またはアドバイスをしてくれる。ベンチャー企業とベンチャーキャピタルが最終的に目指しているのは、株式上場(IPO)である。
 ところで、ベンチャー企業をventure firm と日本語をそのまま英語に直すと、ベンチャーキャピタルを意味する言葉となるので注意が必要である。ベンチャー企業は英語でventure backed company という。

日本の翻訳会社
 日本の翻訳会社の多くは、売上高1億円以下、従業員5人以下の小規模企業である。また、実態はわからないが、公表されているデータから推定すると、翻訳会社の社員の平均年収は約400万円弱、フリー翻訳者の平均年収は約300万円弱である。
 これを他の業界と比較するのではなく、会社規模による労働生産性と年収という別の軸で見てみると、どの業種でも大企業の方が中小企業と比べて労働生産性も年収も高いという統計結果がある。では、翻訳会社も会社の規模を大きくし、受注量を増加することで、社員の平均年収をあげることができるのだろうか。
 製造業では、モノの価格は大量受注することで割り引くのが普通である。翻訳会社も、大量受注して価格を割り引くことがある。大量受注で総務や経理などのオーバーヘッドコストの比率は減少するが、プロジェクト管理コストは増加し、翻訳者への経費は変わらない。たくさん仕事を出すから翻訳料金を下げるといった、翻訳者に対する価格交渉は翻訳業界ではあまり行われていないようだ。そう考えると、翻訳業界というのは規模の経済が働きにくい業界と考えられる。

翻訳会社の目指すべき方向(高収益に向けて)
 目指すのは会社の規模拡大だけではない。非競争化要因を創り出し他社との差別化を目指す必要がある。翻訳会社が取れると考えられる戦略は、「専門分野における質の差別化」か、「ある程度の質を保ったローコストリーダー」を目指すかのどちらかだろう。
 質の差別化を目指す場合、少数精鋭で専門分野を極め、知識量を集中的にその分野に投下することで質の差別化を行い、価格水準と付加価値率の向上を目指す。これはアメリカのベンチャー企業が行っていることである。専門分野に集中し、その他の分野はパートナーシップを積極的に組む。
 ローコストリーダーを目指す場合、いずれは中国人翻訳者との競争に巻き込まれないとも限らない。トラドスなどツールによる作業の効率化だけでなく、外部翻訳者に対しての価格交渉や機械翻訳の導入も検討していく必要があるのかもしれない。
 日本の小規模企業でも、強みに集中して高収益を実現している企業はある。そこを目指してみよう。

 いつもと違う研究会の内容のため、受講者もいつもと違い翻訳会社の役員や経営者が多く、どことなく重厚な雰囲気の研究会であった。最後の受講者からの質問は予定時間をかなりオーバーするほど多く出て、質問にも、廣瀬氏からの質問の答えにもみな真剣に耳を傾けていた。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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