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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

翻訳セミナー情報 JTF翻訳セミナー(東京) セミナー受講ご希望の皆様へ

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2008年のJTF翻訳セミナー活動報告

第5回
開催日 2008年10月9日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:30 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「医薬翻訳者として長く仕事をするために」〜英日・日英の両立で仕事の幅を広げよう〜
講演者 北川 千里(きたがわ・ちさと)氏
医薬翻訳者・通訳者
概要 文系出身であるが、大学卒業後に入社した会社がたまたま外資系の製薬会社であったことがきっかけで医薬分野の翻訳をするようになり、その後20年あまり、プロの通訳者・翻訳者として仕事をしてきた講師が、その経験に基づいて、これから医薬翻訳者になりたいと思っておられる方達や、医薬翻訳者としての経験がまだ浅い方達に、激励の気持ちでアドバイスをさせていただきたい。また、「ほんやく検定」の採点委員としての経験から、特に和文英訳に関して気がついたこともお話しさせていただくつもりである。

【対象】
○医薬分野で経験5年未満程度の若手フリーランス翻訳者・社内翻訳者の方
○医薬翻訳会社のコーディネータ・QAの方

⇒本研究会の講義内容をDVDで受講できます

【講師略歴】
神戸市外国語大学英米学科卒業後、外資系の製薬会社に入社。
開発部にて秘書業務、翻訳、通訳、薬品の開発などに携わる。
3年間勤務し、その後フリーに。
子ども二人の出産・育児を経験しながらフリーランスの翻訳者・通訳者として20年近く仕事を続け現在にいたる。
仕事での翻訳・通訳の比率、翻訳での英文和訳と和文英訳の比率はそれぞれほぼ半々で、医学・薬学の占める割合は翻訳では約9割、通訳では約5割。
2001年から日本翻訳連盟が運営する「ほんやく検定」で審査担当を務める。

2008年度 第5回JTF翻訳セミナー報告

 英語に最初に触れたきっかけは何だっただろうか? 翻訳を職業にしている方にとっては、この最初のきっかけが重要だったという方も多いだろう。北川氏のきっかけは、中学入学と同時に始まった英語の授業である。最初の授業で、Desk という単語は英語で机のことを表し日本語では「机」のことであるが、決してDesk = 机なのではないと教わったことを覚えているという。これは翻訳、通訳という仕事の本質を表しており、単なる言葉の置き換えではなく、異なる言語を使う人たちが、何を言おうとしているのか、何が言いたいのかを理解し、整理して別の言語に変えるというのが、これらの仕事をしている人たちの使命であるはず。その後、医薬翻訳者、通訳者となり20年以上活躍してきた北川氏が、翻訳、通訳という仕事について語った。

プロの翻訳者として
 プロとして重要なのは、一度引き受けた仕事を何が何でもやり遂げるという強い責任感と使命感を持ち、顧客の満足を得られる成果物を仕上げることである。そのためには、健康管理や仕事環境の整備など、翻訳と直接関係ないことも整える必要がある。フリーランスの場合は、過去の仕事や現在抱えている仕事の管理も重要であり、発注先、受注日、締切日、内容、翻訳料金、入金日などを一枚のシートにまとめて、案件ごとに通し番号で管理する。こうすることで、駆け出しの頃は、自分の翻訳スピードを把握したり、得意、不得意分野を客観的につかむことができる。ベテランになってからは、過去に受けたのと同じような仕事を受けた時に、過去のデータを検索しやすくなる。

翻訳の質を高めるには
 良い翻訳とは、「何も足さない、何も引かない」翻訳であり、等価翻訳と言えるものである。ただし、これは一語一語原文通りに訳すのではなく、原文の意味に等しい訳をするということである。
 文系出身者が医薬翻訳に取り組むには、まずは自分の興味のある分野や疾患を選び、それに関する英、日両方がそろっている資料を読み勉強するのが良い。ワシントンマニュアル、循環器疾患薬物バンドブック、メイヨー・クリニックの脳卒中ハンドブック、心臓インターベンションハンドブック、MGH 麻酔の手引き、などは英語、日本語が両方そろっているので参考になる。また、勉強中も逐次自分の単語帳やメモ帳を作成しておくと後でとても役に立つ。
 文系出身者は専門性について悩むことが多いが、英語が得意な文系出身者にメディカル知識を教えるのと、専門分野には強いが英語が苦手な理系出身者に英語を教えるのとでは、前者の方が翻訳者としてより活躍できる、とのデータもあるので、文系出身者も地道な努力を続ければ道は開かれているので頑張ってほしい。

翻訳会社との関係
 翻訳会社からの信頼を得るために重要なことは、質の高い翻訳を納期厳守で提供することである。質の高い翻訳とは、リズムがあり読みやすく、ムラがない翻訳のことである。翻訳にムラがある人は、自分の得意分野と不得意分野を把握し、不得意分野で翻訳の質を落とさないよう、知識を付けていくことが必要。
 また、翻訳会社への要望として、納品時に一言でも良いので無事受領したことを連絡してほしい。翻訳者にとっては、時間をかけて作り上げた" 作品" を納品するのと一緒で、作品が無事届いたことがわかるとそれだけでホッとする。

 文系出身者が理系の専門分野を翻訳するには、わからないことを分からないままにしないで、粘り強く調べたり人に聞いたりするという地道な努力を怠らないということに尽きる。とにかく、粘り強くどんなことにも取り組むということが北川氏の信条であり、講演中に何度も力説されていた。言葉で言うのは簡単だが、同じようなことを何度も人に聞いたり、専門書を求めて図書館や書店を探しまわったりという地道な作業の積み重ねが重要なのだということを改めて認識させられた。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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