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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

翻訳セミナー情報 JTF翻訳セミナー(東京) セミナー受講ご希望の皆様へ

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2008年のJTF翻訳セミナー活動報告

第4回
開催日 2008年9月11日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:30 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「IT翻訳のQA担当者からみた"良質な翻訳"とは」
講演者 上條 博之(かみじょう・ひろゆき)氏
株式会社十印 プロダクション本部 翻訳部
概要 翻訳会社で品質管理を担当する立場と、在宅翻訳者/QA としての経験も踏まえて、産業翻訳の動向をまとめ、翻訳者/QAが関わる業務の流れを概説する。これを前提にして、日々の現場から見て取れる「良質な翻訳」のポイントを示し、そうした翻訳を生み出すための能力、およびスキルをまとめる。
また、プロジェクトに関わるフリーランスにとっての「チームワーク」について、経験を踏まえて「自らの立ち位置」の例を語る。「産業翻訳者/QAであり続けること」を検討し、時流を見る目、将来への対応について述べる。

【対象】
○IT分野で実務経験のあるフリーランス翻訳者・オンサイト翻訳者・レビューアの方
○IT翻訳会社のQA・プロジェクトマネージャ・コーディネータの方

⇒本研究会の講義内容をDVDで受講できます

【講師略歴】
雑誌編集者だった頃に、記事素材作成を目的とした英和翻訳を始める。その後、(株)ランゲージドキュメンテーションサービスに翻訳者見習いとして入り、英和・和英翻訳および英会話の訓練を受け、マニュアルの翻訳/ライティング/QAの経験を積んで、1996 年より専属の在宅翻訳者。ローカライズ系の翻訳を主とし、翻訳者、QA として多様な案件を経験。2002 年 10 月頃から十印ヒューマンフロンティア(当時)とのお付き合いが始まり、2005 年から十印にてオンサイト QA。2007 年 10 月より現職。

2008年度 第4回JTF翻訳セミナー報告

 翻訳会社が手がける「案件」の成功を目指すとき、良質な翻訳とは「良い結果を出し続けるための継続的な努力」により達成されるものである。翻訳者やQA 担当者の人選および作業品質を重視しつつ、案件の各段階に関わる営業、DTP、プロジェクトマネージャー、エンジニアなども各工程を滞りなく進めれば「良い成果物」が得られる。そのためには、相互の的確な連携を重視し、関係者各位の報告、指示、納品などに関連する連絡や作業を効率化して、「時間を無駄にせず、むしろ作業時間を" 作る" ようにすること」が大切である。こう考えると、「時間の無駄を生じさせない翻訳=良質な翻訳」とも言えるのではないだろうか。「良質な翻訳」のポイントについて、上條氏が語った。

産業翻訳業界の動向
 この10年でローカライズ的手法が浸透し、翻訳支援ツールを利用して用語や訳文の統一をはかる高スループットで低コストの翻訳も、種々の問題や課題を残しつつ定着した。翻訳支援ツールは、他の翻訳者やQA 担当者との間で過去の翻訳資産や関連情報を効率的に共有することを可能とし、良くも悪くも翻訳の" 質" の継承および向上に寄与している。
 翻訳支援ツールを利用する際の最重要ポイントは、作業の効率化を目的として、実際の翻訳作業用データおよび指示書を作る「下準備」、さらに翻訳/QA 後の申し送りの処理方式および納品準備といった「後工程」を、入念かつ的確に構築することである。これらをおろそかにすると、トラブルによる手戻りなどで翻訳/QA の作業時間が圧縮され、効率の悪化が時間の無駄につながり、質が悪く利益率も低い翻訳となる。

翻訳者/QA 担当者の「翻訳の質」
 以上を踏まえると、翻訳者/QA 担当者の「翻訳の質」の評価軸として、語学力、専門知識といった項目だけではなく「申し送り事項の的確さ(量的、質的に)」も非常に大切である。このため、翻訳/QA 後の申し送り用ファイルを、翻訳案件の「ワークフロー」の中で重視したい。効率的な申し送りの仕組み、たとえばクエリシートなどを設計することにより、翻訳/QA など各位の間で効率的な情報伝達/ 処理が可能となる。また、客先納品の担当者は、わずかな編集作業のみで客先への申し送り事項を納品物に追加できる。こうして翻訳/QA の工程に時間的な余裕を作り出すことが「良質な翻訳」への好循環を生む。

作業環境
 作業環境も翻訳の質に大きく影響する。パソコンのOS 環境はもちろん、OS 環境とSDL Trados など翻訳支援ツールとの相性などに的確な知識が必要である。現在の翻訳支援ツールは「与えられた仕事データを処理するため」に使われているが、自ら原文読解や用語管理に援用するといった主体的な活用ができれば、翻訳を意識的に行うようになりスキルアップにつながるだろう。また、OS や支援ツールを的確なタイミングでアップグレードすることも仕事の作業環境維持に不可欠なので、賢く実施する必要がある。さらに、十分な機能および性能を持つパソコンや周辺機器(モニタ、キーボード、椅子など)を使用するといった作業環境の保守管理は、心身の健康を保ちつつ良質な翻訳を長く続けるために非常に重要な項目である。

 時間の無駄をできるだけ省くことが良質な翻訳を得るカギのひとつである、という上條氏の考えは、一見当たり前でありながら実務翻訳をチームとして仕上げるという視点で見た時に非常に深い意味を持つ。普段、一在宅翻訳者として目の前の仕事をこなしているだけだと見えてこないことであるが、原文として渡される資料にどんな前処理が施されているのか、翻訳して納品した文書がその後どのような後工程をたどってクライアントの手に届くのかを知らなければ本当に良い翻訳はできないであろう。そんな重要なことに気づかされた研究会であった。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


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