本ウェブサイトでは、スタイルシートを使用しております。このメッセージが表示される場合には、スタイルシートをoffにされている、またはブラウザが未対応の可能性があります。本来とは異なった表示になっておりますが、掲載している内容に変わりはありません。

以下のリンクより、本文へジャンプができます。

JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

翻訳セミナー情報 JTF翻訳セミナー(東京) セミナー受講ご希望の皆様へ

| 活動報告一覧へ戻る |

2008年のJTF翻訳セミナー活動報告

第3回
開催日 2008年8月7日 セミナー: 14:00 〜 16:40 懇親会: 17:30 〜 19:30 [希望者のみ]
テーマ 「日英特許翻訳の品質管理」
〜翻訳者としての立場と翻訳会社としての立場から〜
講演者 時國 滋夫(ときくに・しげお)氏
日英特許翻訳者
概要 日英特許翻訳の品質については、原文と翻訳文を目の前において読み、具体的な議論をすることが必要である。この作業を積み重ねることで品質は向上するが、時間がかかる。今回の限られた時間の中で具体的な議論をすることはできないが、それ以外の部分でも品質を向上させる手はある。翻訳全般についての品質についての考え方から始めて、法律文書を作る日英特許翻訳の特殊性までをきちんと把握することである。参加者それぞれが品質を向上させていくためのいくつかの方向性を提示したい。顧客から見れば、最後は誰が(どの翻訳者が、どの翻訳会社が)翻訳を担当するかという点に帰結するため、翻訳者向けの内容と翻訳会社向けの内容が異なるように思われるかもしれないが、結局のところは同じことを異なるレベルで見ているのである。<

【対象】
○すでに実務経験のある日英特許翻訳者の方
○特許翻訳会社のQA・レビューア・コーディネーターの方

【講師略歴】
1979年早稲田大学理工学部卒業。
電機メーカで産業用電子機器の回路設計者として9年間勤務した後に、翻訳者に転じる。
翻訳会社の社内翻訳者として働き、その後独立して、電子工学専門の日英特許翻訳者となる。
英語と特許翻訳の教育・コンサルティングも、個人向けと会社向けに行う。
共著で、『特許の英語表現・文例集』『科学技術系の現場で役立つ英文の書き方』を講談社から出版している。趣味はランニング、テニス、スキー。

2008年度 第3回JTF翻訳セミナー報告

 翻訳者が自分で行う品質管理にはどのようなものがあるだろうか? 人によって様々な基準で訳文を作成し品質管理を行っていると思うが、どんな訳文にも必ずそれを読む対象読者がいて、その読者向けに文書を供給する最終的なクライアント(メーカーなど)がいる。時國氏は、良い訳文を作成するためには、このような相手(対象読者、クライアント)を知ることがまず重要であると説く。その上で、自分がどのような立場で翻訳するのかを客観的に考え、その立場で訳文を作成すれば最良のものができるということだ。第3回環境研究会では、日英特許翻訳者の時國氏が品質管理について、「相手を知る」、「特許翻訳者の品質管理」、「翻訳会社の品質管理」という3つのキーワードで語った。

相手を知る
 Technical Writing では最初にこれを行う必要がある。相手を知るとは、相手の持っている知識や相手が文書から知りたいと思っていることを正確に認識することである。それにより、文書に使う用語の難易度やどこから説明を始めるか、利用者の目的をいかに満足してもらうかを考えながら文章を書くことができる。
 特許翻訳における相手とは主に、最終的なクライアント(出願人、発明者、メーカー)、翻訳発注クライアント(特許事務所)、翻訳会社となる。自分がどの立場にいるかにより、相手は変わってくる。その相手が何を望み、何に不満を持ち、これからどうしようとしているかを把握することは非常に重要である。翻訳者は良い訳文を作成するためにも翻訳に関わる多くの人たちと情報交換すると良い。

特許翻訳者の品質管理
 翻訳者は多かれ少なかれ自分の訳文作成のよりどころとなる評価基準を自分の中に持っていると思う。時國氏の評価基準は、誤訳の有無(訳抜け、数字の間違い含む)、訳文が一義的かつ論理的であること、読みやすいか、の3点である。自分の評価基準と翻訳会社の評価基準が一致しない場合、翻訳会社の評価基準に合わせるしかないが、あまりにも基準がかけ離れている場合は、仕事を受けないというスタンスも重要である。翻訳会社の評価基準は、翻訳会社に直接確認すればほとんどの場合教えてくれる。また併せて自分の評価も聞いてみると良い。どうすれば良い訳者になれるのかを知る一番早い近道である。これがすなわち「相手を知る」ということである。
 また、特許翻訳者であれば、法律文書であることを意識する必要がある。技術翻訳で必要となる、日本語力、英語力、専門知識に加えて、特許法規・特許実務についての知識が必要である。そのためには、特許法の必要最低箇所は読んで知っておくとよい(35USC、37CFR、PCTRegulations、MPEP など)。

翻訳会社の品質管理
 営業担当とコーディネータが重要である。営業担当者は、依頼された翻訳に対して顧客が何を求めているのかを知る必要があり、コーディネータは、営業担当者が受注した翻訳の文書内容をつかみ、翻訳者の中からその内容が一番得意そうな人に仕事を依頼すれば、品質が維持できると考えられる。両者とも、特許文書や法律についての知識を持ち、クライアントと対等に話ができるようになれば、営業担当はより自分の会社に有利な仕事を多く受注できる可能性があるし、コーディネータは、翻訳者の得意分野の仕事を割り振ることで、その後のチェックの時間を大幅に減らしたり、翻訳者のモチベーションを上げることができるという利点がある。

 相手を知り、最初のうちはなるべく多くの量をこなして多くの原文に接すること、そしてできればフィードバックを受け、自分の訳文を磨いていくことにより、特許翻訳者の質は向上すると時國氏は自身の経験から感じている。翻訳の質、ということについて改めて考えさせられた研究会であった。

報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者)


活動報告一覧へ戻る

ページトップへ