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JTF翻訳セミナー(東京) JTF関西セミナー(大阪)

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2004年のJTF翻訳セミナー活動報告

第3回
開催日 2004年8月10日
テーマ 【通算84回】
「品質改善:新トライアルでミスマッチ解消」
講演者 近藤 哲史氏(伝株式会社 取締役)
概要 近藤氏は、昨年度『JTF翻訳環境研究会』でも大好評を得た講義の再演を求める声に応え今回、同じ主題の下に同氏の実施経験から新たに編み出した指導方法を広く翻訳業界に提示する。具体的には事前に講演内容と趣旨を詳細に広報し「公開トライアル」として簡単な課題文を配布し、参加希望者の答案を求め、その一部を会場で評価する。

【講師略歴】
【概要】
近藤氏は、昨年度『JTF翻訳環境研究会』でも大好評を得た講義の再演を求める声に応え今回、同じ主題の下に同氏の実施経験から新たに編み出した指導方法を広く翻訳業界に提示する。具体的には事前に講演内容と趣旨を詳細に広報し「公開トライアル」として簡単な課題文を配布し、参加希望者の答案を求め、その一部を会場で評価する。

2004年度 第3回JTF翻訳セミナー報告

【講師略歴】
伝株式会社取締役。
1991年民間の原子力研究所から翻訳業界に転身。
1995年伝株式会社の設立に参画。同社取締役として、品質管理とトライアルの課題作成、採点、評価に携わる。
●トライアル課題の仕様の遵守
 翻訳者にとって見落としがちなトライアル合格要素が、トライアルの仕様どおりに作成しているかである。具体的には、ファイル形式や文体(です・ます調など)だけでなく、誤字・脱字、漢数字を避けるといった数字表記、また漢字・かな書きの区別などが挙げられる。これらは技術文書の工程として翻訳がその後「加工される」点を考慮し、翻訳後の手作業をできるだけ少なくするための配慮といってもよいものである。翻訳文自体には影響は少ないように見えるが、近藤氏によればこの仕様の段階で大きなマイナス点になってしまうものが比較的多いので、細心の注意を払わなければいけないという。

●技術文書としての正確な訳出
 今回のトライアル課題「家庭用ジューサーの取扱説明書」のような技術文書としての翻訳には、正確な訳出が必要不可欠である。例えば、数値や単位を正確に換算するだけでなく、量が増える/減るや動作の方向(上下左右)など、原文に書かれているな事実と異なる訳文さらには訳抜けをしては大幅な減点になってしまう。原文の内容を「事実として捉え」忠実な訳文に反映させることが、技術文書の特質ゆえ重要な点である。

●課題文の内容理解
 近藤氏はさらなる採点基準として課題文の内容を理解しているかという点を挙げた。内容理解は単なる英文解釈とは異なり、原文の微妙な言い回しや踏み込んだ表現を的確に捉えることである、という。これにより、原文の表現を訳文として論理のなめらかな展開に再構成する。また原文中の事実を読み手にとって自然な表現で言い表すことにつながる。これは先の「正確な訳出」は内容理解があってこそ次のポイントである「自然な表現」ができる。

●日本語としての自然な表現
 技術文書の翻訳と言えども成果物は「日本語の文書」として読まれることに変わりはなく、このためには日本語としての自然な表現が重要となってくる。読み手にとって自然な流れを作り出すには、翻訳が「文章としてのリズムを持つ」ことが大切である。具体的には、できるだけ接続詞を加えないことや、くどい丁寧表現は避けるなどのテクニックを同士は挙げている。
 この流れに、技術文書として先に挙げた「論理のなめらかな展開」を加えることも忘れてはならない。答案の中で多く見受けられたのが、一文一文を訳した上で、その前後の文と比較しつなげてはさらに短くまとめてしまい、原文の全体像が変わってしまう例である。これらは原文の情報の流れを変えたり無理に止めることにもなりかねない。ただし日本語の自然な流ればかりに集中しすぎて内容理解を誤って訳出してしまうこともある。技術文書を手にする読者のことを考えれば、こうした「論理の展開と自然な日本語」のバランスをとることが大切である。

●トライアルで求められるものを意識する
 これまで挙げてきた採点ポイントはすべて相互に密接に関わっている。こうした採点基準に表れているのは、近藤氏が求める翻訳者とは、「上手な翻訳」ができる人ではなく「良い日本語版」を作れる人である。これはすべてトライアルの意識を明確に表している。同士によれば、トライアルは原文である取扱説明書からの抜粋を訳すものでなく、訳文となる取扱説明書を想定しその中からの「抜粋」と考えなければならない。それは技術文書にあるドキュメントの世界を的確につかみ、つかんだ世界を自ら語りかけることである。トライアル合格を目指すには、ビジネス・マナーを守る以外にも、翻訳が使われている状況を念頭に置きながら、正確な訳出、内容理解、そして原文を自然な日本語として仕上げることが必要なのである。

報告者:玉置 祐子
(個人翻訳者、日本通訳学会・翻訳理論研究会所属)


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